ヴィーコ - 学問の起源へ (中公新書 2035)

著者 :
  • 中央公論新社 (2009年12月18日発売)
3.50
  • (3)
  • (4)
  • (5)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 81
感想 : 7
5

本書は、東京外語大学名誉教授であり、

イタリア思想を専門とする著者が、

17世紀イタリアの哲学者ヴィーコについて解説する著作です


幅広い分野を包括する議論を展開し、

クローチェ、ハーバマス、バーリン、清水幾太郎など

錚々たる思想家によって取り上げられながらも

日本では、十分に知られているとは言えないヴィーコ。


著者はヴィーゴの自然科学者、キリスト教者、バロック人等の側面に注目し

実験・実証を重視しつつも、理性の限界を強調したヴィーコの思想を紹介します。


同時代を生き、近代思想の基礎を築いたデカルトに対する厳しい批判

「人類の共通感覚」を通じた「最初の人間たち」の理解

彼の著作の表紙に登場する「叡智の目」など、

興味深い記述が多くありました。

なかでも個人的に特に興味深いのは

キリスト教者であり、ピエール・ベールを批判したヴィーゴが

神学的な傾向を薄め、「共通感覚」に依拠していく経過と

それに対する著者の評価です。


「自然の学と自然の同一視」や「学識の誤り」など近代が内包する危うさを、

その創成期において指摘したヴィーコの鋭い問題意識と

今日における重要性を簡潔に知ることができる本書


思想史に関心がある方はもちろん

一人でも多くの方にオススメしたい著作です。

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: 思想史
感想投稿日 : 2010年6月27日
本棚登録日 : 2010年6月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする