恥辱 (小学館文庫 ア 4-4)

  • 小学館 (2007年11月6日発売)
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本棚登録 : 44
感想 : 7
5

スウェーデンの作家カーリン・アルヴテーゲンの4作目。
過去を抱えた二人の女性の出会いがもたらすものは‥

モニカは38歳の有能な医師。
仕事で成功しているが、少女の頃のことで、いまだに深刻な罪悪感に苦しんでいた。
恋人も出来たのだが、心のうちを明かすことが出来ない。
ある事故に遭遇したモニカは責任を感じ、贖罪のために、ある行動に出ることに。

一方、ひきこもっているマイブリットは50代の女性。
過食で肥満体となり、ヘルパーの手を借りなくては身の回りのことも出来ない障碍者となっている。
ヘルパーにきつく当たる皮肉屋で、過去のことは忘れるようにして暮らしていたが、これまでと違うタイプの若いヘルパーが登場し、へこたれない彼女に戸惑う。
さらに幼馴染からの手紙がきっかけで、次第に過去の事実と向き合うようになる。
幼馴染だった女性は、終身刑で刑務所にいた‥

まったく違うタイプの女性の運命が、しだいに交錯するようになります。
実はある共通点があり、それは人に話すことすら出来ない過去を抱えていることだった。
不運もあるが、この場合、親の責任は相当に大きいですね。親本人は自分を貫いているだけで、わが子に悪かれと思っているわけじゃなかったにしても。
少し晴れ間の見える方向へ、二人共に向かったのが何よりです。

作者は1965年スウェーデン生まれ。
98年デビュー。
2作目の「喪失」で、北欧の推理小説賞を受賞しています。

この作品は、謎やスリルはありますが、殺人事件の解決といった展開になるわけではありません。
そういうミステリが苦手な人にも読んでいただけます。
重めなので、立て続けに読むってわけにはいかない作家さんですけど~
深く切り込んでも手際よくさばいていく手つきは確かで、読後感は悪くありませんよ。
感動と救いがあります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外小説
感想投稿日 : 2015年11月6日
読了日 : 2015年9月6日
本棚登録日 : 2015年12月18日

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