もうこの本については語りつくされたような感があるが、やはり気になるのでレビューを書く。
本書の問題点
・サンプルが少なすぎる
少なくとも100人ぐらいの統計を取りたいところ。
・論理の飛躍
本書によれば、ソフトウェア開発者は、コンピュータを長時間使用することから、ゲーム脳と同じような症状が見られるらしい。え?ソフトウェア開発には注意力や細かい作業が必要なのではないだろうか?
また、人前で水を飲んだりパンを食べたりするのは脳の問題と述べられている。ところでアメリカを始め欧米では、女性が電車の中で化粧したり、カップルが人前でいちゃつくといった行為は普通。
要するに、ソフトウェア開発者や欧米人は「脳がおかしい」と言いたいようです。彼らの目の前で「お前らの脳はおかしい!」と言ったら、きっと怒り心頭だろう。
・著者が脳波について認識不足
著者によるとゲームをしているときにはα波が出るそうだが、これは痴呆症者(今は認知症者と言うべきだが…)に多く見られるので、これが「よくキレる」といった症状に代表される「ゲーム脳」の原因になっているらしい。つまり、ゲーマー=認知症患者と言いたい様子。
ちなみに、α波は斉藤環氏に因れば目を閉じたときやリラックスした時にも発生する。 また「脳トレ」で有名な川島隆太氏は「ゲームは脳をリラックスさせる効用がある」とまで述べている。
・権威の悪用
著者の森氏は日大文理学部の教授で運動生理学が専門分野だそうな。我々は大学教授が言うことは100%正しいと思いがちである。森氏はそれが虚偽であることを、自らに向けられるであろう批判を物ともせず、身をもって教えて下さった。先生のご高説は、私めなどには到底理解できません!素晴らしい!素晴らしすぎます!本当にありがとうございます!!
ゲームのし過ぎは確かによくないと思うが、ゲームは全否定すべきものではないはず。ところで、本書の内容を真に受けることは、音楽活動をしている人を「音楽脳」、長距離トラックの運転手を「運転脳」、スポーツ選手を「スポーツ脳」と呼ぶのと同じようなことだと思った。
これは世紀に残る素晴らしいトンデモ本である。
- 感想投稿日 : 2011年6月18日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年6月18日
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