日本企業のすり合わせ能力―モジュール化を超えて

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  • NTT出版 (2012年1月25日発売)
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日本の製造業の強みを今後どう活かしていくべきかを提言していた本。

ものづくりに関して、すり合わせ(インテグラル)型と組み合わせ(モジュール)型という2つの概念が存在し、日本はすり合わせを強みとしている。しかし、かつてすり合わせを強みとしていた製品がモジュール化する現象が起きている。例えば、テレビ。モジュール化する中で日本の強みであるすり合わせを活用するように筆者は提言している。モジュール化するということは共通基盤ができることになり、どこまでを共通化、標準化するのか、また他の製品(例えばテレビと携帯電話)との共通のプラットホームを築き、そして補完部品との拡張性を決定しデザイン・ルールを築く。どこまでを共通化するといった問題は難しく、部門間で異なる判断になりえるので、相互調整を必要とする。そこで、すり合わせにおいて培われた綿密な連携、調整力はモジュール化におけるデザイン・ルールを決める上で活用できると提言している。
このような活用方法が今後の日本の製造業にとってはとても大切になるのではないかと思う。技術革新が起こり、部品数が減ればモジュール化しやすくなり日本の強みであるすり合わせが活用しにくくなる。多くの人はハイエンドな製品よりは標準的な製品で満足するから。そこで、モジュール化する中で今までの強みを活用することは今後のものづくり競争において大切になると共感した。

しかし、この本は基本的にすり合わせの強みに焦点を置き、すり合わせの活用方法を書いたもの。ここで研究者としてのこの1冊を出版したなら提言よりはもっとすり合わせの弱みにも焦点を置き、すり合わせのメカニズムや組み合わせのメカニズムをもっと示すべきではないか疑問に思った。それらを読んだ上で、提言していくのはそれぞれの業界のプロフェッショナルではないかと思う。研究は過去のサイクル、仕組みを明らかにするもので、予言でなないと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済学
感想投稿日 : 2012年11月1日
読了日 : 2012年10月28日
本棚登録日 : 2012年11月1日

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