ハナモゲラ和歌の誘惑

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著者 : 笹公人
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なだらそう きよひにきらり しらきぬのひとひらひらに みどりたちまち
 糸井重里

 作者はコピーライター。「山の美しさに感動して詠める」という詞書【ことばがき】のついた、「ハナモゲラ」和歌である。

 意味よりも、韻律や音の新鮮さを楽しんだ「ハナモゲラ語」は、1980年代前後に、ジャズ・ピアニスト山下洋輔と、その友人たちの間で流行していた。その元をたどれば、次の歌にたどり着くという。

 みじかびのきゃぷりきとればすぎちょびれすぎかきすらのはっぱふみふみ
 大橋巨泉

 万年筆のコマーシャルにこれが使われたのは、1969年のこと。言葉遊びと言えばそれまでだが、むしろ、短歌定型と、日本語の音の特徴、韻律というものを再考させる実験作だったようにも思われる。

 これらを、日本語の母音やオノマトペ、大和言葉等の視点から精緻に読み解いた笹公人の新刊「ハナモゲラ和歌の誘惑」は、真摯な問いを含んでおり、興味深い。

 かつて作詞家でもあった笹公人は、ヒット曲の歌い出しとサビに「ア行の音」(アカサタナなど)が多いことを熟知している。「ア」音が、明るく開放的な印象を与えることは、過去から多く指摘されてきたことなのだ。意味内容だけが短歌の根幹ではなく、音やリズムにも鋭敏でありたい。

 一二三四五六七八九十十一十二十三十四 
  筒井康隆

 著名な小説家によるパロディ歌だが、「和歌/短歌って何?」と認識を揺さぶるこういう問いは、大切なものと思う。
(2017年5月28日掲載)

レビュー投稿日
2017年5月28日
読了日
2017年5月28日
本棚登録日
2017年5月28日
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