プロ野球解説者の嘘 (新潮新書 412)

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  • 新潮社 (2011年3月1日発売)
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「プロ野球解説者の嘘」
プロ野球には誰もが知りたいと思える素朴な疑問が残されている。誰も確かめていない為に解説者の思い込みを漠然と聞かされているが、調べてみると逆の真実が明らかになる、という事象はいくつも隠されている。


突然ですが、巨人戦のOB解説者が「まだ3イニング残っていますから、巨人の逆転は十分可能です」と6回まで終わり負けている試合の途中で、こう言ったとします。この発言が2005年の巨人戦でされたものとすると、実は解説者の解説は少しずれているということになります。


なぜなら2005年の巨人の6回を終えてリードされた試合は1勝71敗1分であるからです。このデータを踏まえると本来解説者は「3回残っていますが、巨人の逆転はとても難しい」と言うことが正解になります。また2005年から2009年までの両リーグ全体調査では、6回にリードを許していたチームの勝率は.124に過ぎません。つまりは6回をリードされると9割近くが敗戦に至るということがプロ野球の真実です。


・・・と、このように実は解説者の解説とは違う事象が存在していることが分かります。著者・小野氏はこの点について、「ファンは虚像を聞かされ続け、野球の本質を知る楽しさを奪われてきた」と述べています。このような小野氏の視点は「まえがき」に書かれています。


この「まえがき」を読むと、私は本書は「野球の本質に解説者が気づいていない、ファンに本質を伝えていない」ということについて書いていると思っていました。しかし、実際はイチローや王貞治、野村克也といった選手の凄さに着目していると感じました。


したがって、表題とは少しずれを感じました。解説者の嘘についての深い内容を期待して読むとちょっとがっかりするかも知れません。


イチローや王貞治、野村克也の凄さは豊富なデータとエピソードから理解出来るんですが・・・。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: スポーツ
感想投稿日 : 2012年5月8日
読了日 : 2012年5月8日
本棚登録日 : 2012年5月8日

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