100年先を読む: 永続への転換戦略

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  • モラロジー研究所 (2011年11月1日発売)
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「100年先を読む」
現代の人間は子孫の資源を食い尽くしている。そこで最近はバックキャスティングという言葉が登場してきた。現在から未来を予測することはフォアキャスティング、バックキャスティングは期待するべき未来から現代の行動を想定すること。


第1章:開発から回復へ


第2章:拡大から縮小へ


第3章:画一から多様へ


第4章:物質満足から精神満足へ


第5章:震災を越えて


物語は第1章の「はなやか」で「はかない」人間というテーマから始まります。地球には5000万種類以上の種が存在しており、人類もその1つであるはずですが、そんな人類は地球に多くを依存しながら驚異的に進化を続けてきました。現在人口は70億人で40年後には90億人を突破することさえ予想されています。一見すると地球の歴史上最も成功を成し遂げた種になりますが、同時に異常な成功とさえ思われます。そんな人類はいかにしてこれから地球と共に生き抜いていくべきなのか?期待する未来の為に現在はどうあるべきなのか?


私は第2章がとても良かったです。特に以下(要約)


有限である地球に生きている限り無限の増大は達成できないのは明白。そこで人類は縮小していかなければならない。この時有効なものは日本が育成してきた縮小文化である。この縮小は物質が縮小すればするほど、精神が拡大していく縮小である。現在日本は政治や経済がグローバリズムの潮流に翻弄され世界における地位を低下させ、国民も自信を失っている。しかし島国で育成されてきた縮小文化は地球で限界を感じ出した人類にとって、大きな力となり、今後重要度を増すだろう。これにより日本は世界に貢献でき、自信を回復することが出来る。


この意見は非常に印象的です。世界のグローバリズムの潮流に翻弄されているのは経済だけ(政治はそもそも日本のぶれぶれ&堕落政治家の問題が大きい。よってグローバリズムのせいだけに出来ないと思う)だと思うが、縮小文化、特に精神の拡大を狙う縮小という点が非常に惹かれます。この縮小文化はちょっとした伝統文化にも根付いていると感じました。


この第2章では「もったいない運動」も取り上げられています。有限な地球に居る限り、資源も有限であるという当たり前なことさえ無視してまたは優先順位を落として生きてきた人類だからこそ、ここまで異常な成長を実現出来たわけだけど、そろそろこの「もったいない運動」のように立ち返る意思が無いととんでもないことになると思います。既にスタートするべき時期は過ぎているかもしれないけど、だからこそ国々は動かないといけない(エネルギー問題も同様。原発にたいしてドイツ、フランスなどの行動の早さと日本の行動の遅さの違いは一体何なのか?原発稼動時期と休息時期でエネルギー問題を見ていく必要があるのではないかと思います)はずです。


そして一番驚いたものはイスラム金融の存在。全く知りませんでした・・・。イスラム金融とは、


①イスラムの教養を墨守して、豚肉、酒、色事などに関する商売に投資しないこと
②利子を禁止、デリバティブ商品も賭博の一種として禁止
③イスラム法律学者で諮問会議を設立して、資金運用、調達が教養に違反しないかの判断を委託する

以上3つを特徴に持つ金融制度のこと。これならサブプライムローンが参入する余地はない。なぜなら住宅を購入する顧客の融資の依頼があった際、金融機関が住宅を先行取得し、顧客は家賃として融資を返済しながら利用し、完済後住宅を所有することになるからです。これであれば、住宅という実体が通貨を裏打ちしているから、サブプライムローンが参入する余地はない。これはなかなか良さそうですよね?


他にも興味深いことが書かれています。一つの教科書のような存在として読んで欲しいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年10月21日
読了日 : 2011年12月20日
本棚登録日 : 2011年12月20日

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