日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか

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  • 集英社インターナショナル (2016年5月26日発売)
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『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』を書いて地域協定の問題をあぶり出した矢部さんの第二弾。本書では、安保条約などの条文化されたものの他にいくつもの日米密約なるものがあり、これが日本をしばっていることを問題にする。その一つは、日本の基地を自由に使えるという密約、もう一つは戦争になったら自衛隊はアメリカ軍の指揮下に入るという(指揮権)密約である。実際、自衛隊が使っている兵器はそのほとんどが警察予備隊のときからアメリカ製(のお古)で、データも暗号もGPSもすべてアメリカ軍とリンクしているらしい。だから、戦争になったら米軍の指揮下に入るというより、最初から米軍の指揮下でしか動けないようになっている。また、自衛隊が守っているのは日本という国土でなく、在日米軍とその基地だという。オスプレイの導入にしても、その動かし方をみていてもいちいち腑に落ちる点だ。矢部さんは、こうした問題を公開された膨大な英文の機密文書を細かく読むことで繙いていく。その切り口はわかりやすいし読みやすいが、それでも本書を理解するのは決してやさしくない。矢部さんによれば、現在の日本は白井聡さんの言う占領体制の継続ではなく、まだ占領下にあったアメリカへの戦争協力態勢が、いまも法的に継続しているということである。つまり、中国の統一を横目で見て、いまなら朝鮮半島を統一できると思って南へ攻め込んだ金日成の軽率な行動(それはスターリンの承諾を得ていたのだが)が、戦後の日本を含むアジア情勢を大きく狂わせたのである。もちろん、朝鮮戦争がなければ日本の復興はもっと遅れていた。しかし、この戦争は日本が真に独立する機会をも失わせた。矢部さんの結論は、この論理からは必然なのだが、ある意味意外でもある。それは、朝鮮半島統一を促進させるプロセスの中で、日本は一旦は米軍基地を追い払ったフィリピンモデルに学び、アメリカとの不平等条約を解消していくことだと言う。それはドイツが東西統一過程で行ったことでもあった。/本書の冒頭では、六本木の真ん中にヘリポートがあり、それが米軍横田基地と結んでいることが明らかにされる。(横田空域なるものがあり、日本の飛行機がその上を飛べず迂回していることはかなり知られては来たが)また、最後のところでは憲法を改正するのではなく、修正条項を追加するという方法があることが、先の著の批判を受けて紹介されている。政治家の人たちにぜひとも読んでほしい本である。(山本太郎さん、ぜひ国会で質問してください)

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感想投稿日 : 2016年6月19日
本棚登録日 : 2016年6月19日

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