トヨタ・ショック

  • 講談社 (2009年2月21日発売)
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トヨタ本社内部ですごくはやっているというこの本。
現在の世界恐慌から見え始めたトヨタの失敗について、事実にかなり忠実に描いているという。

半分までしか読んでいないが、本書の要点をまとめる。

トヨタはかつて、モノづくりのリーダーとして、世の中のニーズに常に機敏に反応しつつ、
壊れにくさ、大衆の重要に応えたタイプの車種製造で世界の”客”を魅了してきた。
しかし資本主義の流れの中、いつの間にか、「より儲ける方法」=「お金ちを喜ばせる方法」を模索し始め、
ニーズの変化に対応しにくい中長期計画である「グローバルマスタープラン」を軸に沿え、
それに従って全ての動きを決めるようになった。
中心幹部はやがて、客一人一人を喜ばすことより、大きな投資をしてくれる”株主”の顔色をうかがうため、
表向きの業績の数字を、現実的なものよりかなり楽観視するような嫌いを見せ始め、
地に足のつかない経営が続いてきたという。

この本を読んでいたころ、朝日新聞の「トップランナー」の紹介に、マッキンぜー日本支社長が紹介されていた。
彼はもともとカンボジア難民としてフランスに逃げ、フランスで大学を出、いろいろな現場で働いたのちマッキンゼーに落ち着いたという。
そんな彼も、昔の日本のモノづくりを称え、同時に現在の日本のモノづくりを嘆いていた。
昔は、製造現場の人々が皆して、いかにいい製品を作り上げるか、活発に議論がなされ、それが元に方向性も変わっていく、
まさにボトムアップ式の構造だったの対し、現在はトップ以外はトップに従うだけの、トップダウン方式。

同じような話題で、ある雑誌に三鷹光器の会長の記事があった。
この会社、完全なる中小企業、一つ一つの製品を大型機械ではなくまさに「手作り」しているに関わらず、
NASAや医療現場など、世界に期待されるプロジェクトや、人の命がかかった現場における信頼を勝ち取る”レンズ”を作っている。
現在では個人向けの販売はされていないほどである。
この会社は会長が立ち上げた。彼は現在も現場で社員の指導をする。
定規から何から、すべての道具さえ、「人任せに買ってくる」のではなく、「自分で作らせる」のだという。
そんな彼が今、日本の社会に、何を思うのか。
彼は言う。
「今は、お金さえあれば何でも買える、誰かがやってくれる、という時代になっている。
人間は日々、ものぐさになろうとし続け、そのなかで何も考えず、何もできなくなっていく。」
まさにその通りだ、と感じた。

100年に1度の世界恐慌が叫ばれる中、そろそろ人間は、お金に対する過剰な期待を捨て、他人任せによる思考停止という快楽より、
自分から何かを生み出すのだという思い、行動、そしてそれに伴う困難を乗り越える達成感を選び直す時を迎えているのではなかろうか。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ○○問題
感想投稿日 : 2009年3月25日
本棚登録日 : 2009年3月25日

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