これは面白かった。
東京オリンピックで活躍した選手をめぐる本ではなく、大会運営を裏で支えた人たちに焦点を当てた本だった。
大会を象徴するポスター、選手村の食事、大会記録のリアルタイムシステム、外国人にも視覚的にわかるように開発されたピクトグラム、民間警備会社など……今では普通だと思っていることが、この東京オリンピックを契機に開発されたり、一般化されたりしたという話が新鮮で面白い。そして、携わる人が皆が不眠不休で働き続けて、しかもすべてが画期的で高レベルという。
「まえがき」に「がむしゃらな情熱」という言葉が出てくるが、東京オリンピックを知らない世代である私が読んでも、その熱さは十分に感じた。この機会にインフラ整備など、いずれやるつもりだった関係ないものもついでに全部やっつけてしまえ、という無茶な感じも勢いがあってこそ。日本全体が、前へ前へ、とにかく「熱に浮かされたように」がむしゃらに走り続けた時代感を羨ましく思う。
東京オリンピックがなければ、日本経済の高度成長はありえなかったという話は知識として知っていても、こうしてその契機となった事物と開発者たちについて詳細に読んでみると、なるほどなあ、と実感する。
15年に渡る取材の上に、出版された本書は記録としても貴重ではないだろうか。面白い本だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
その他本
- 感想投稿日 : 2011年6月25日
- 読了日 : 2011年6月25日
- 本棚登録日 : 2011年6月25日
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