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こういちろうさんの本棚 > なぜうつ病の人が増えたのか


レビュー by こういちろうさん

精神医学・心理療法   読み終わった  読了日 : 2009年10月28日  3

 この本を書くにあたっての冨高氏が思いを語った、終わりの方の部分から引用したい。
「『SSRI発売後、日本全体でうつ病患者が急増した』と説明されても、気分を害す患者の方が多いのではないかと思う。うつ病で苦しんでいるのに、大局的な一般論を説明されると、不快に感じる人もいると思う」(p.240)
個々の製薬会社の個々の薬に関して、治験のあり方、副作用の問題、プロモーションのあり方が問題にされてしかるべきだけれども、十把ひとからげな医療不信を煽る発言は、患者を不安に陥れるばかりで危険でもある。
この本で書かれている問題は、ネット界では結構知られていても、この種の本がどういうわけか日本ではあまり出版されて来なかった中であえて出版に踏み切ったこと(しかも冨高氏のように、非常に冷静でつつしみ深い表現をなさるお医者様がお書きになったこと)に十分な意味はあると思います。
 ・・・・ですが、正直に言って、あの新聞の書評だけで、「おまえは大した鬱じゃない、働け」やら、「薬を飲むのはやめなさい」的な家族争議が日本のどれだけの家庭で発生し、うつの人の心を揺らし、混乱させたか容易に想像がつく。
そのような事態は、著者の冨高氏自身は全く望まなかった事態の筈である。
冨高氏も、純粋に薬の効き目としてみた場合については、旧来の抗うつ薬よりSSRIの方が常に安全で副作用が少ないとはいえないことを、慎重に論じているに過ぎないのである。 何しろ、冨高氏自身は、SSRIが自殺率が高いという、よく言われがちなことについては、ご自身の臨床経験からはむしろ懐疑的なくらいである。
 更にこの本の長所を述べると、産業医である冨高氏は、「製薬会社の側の」広報活動のあり方と、「企業内での、雇用者に対する」うつ病についてのメンタルヘルス的な広報・支援活動の問題を完全に切り離して論じています。
そして、何より効果があるのは、「残業ルールを厳密に守る」ことであると、具体的に断言しています。
 更に、企業が安易にEAP(メンタルヘルス関連の活動の外注)に依存することの弊害を説き、京セラ本社で、わずか1名の専属産業医師と看護師1名で繰り広げた、緻密そのものの休職・復職支援活動の結果、2年間で「再休職した人ゼロ」という驚異的な実績を残したことを紹介しています (pp.222-3)。
  私は、この本を、お読みになるとすれば、冷静に細やかに読解し、安易にこの本を振りかざして、「重たくない」とされるうつ病の人を軽視することに繋がらないことを祈ります。

 何と冨高氏自身も、本書の中ではっきり次のように書いておられる。

「会社員のうつ病は、統合失調症や重度うつ病より診断が楽ということは決してない」(p.28) 登録日 : 2009年10月28日 18:02:52


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