レビュー by こういちろうさん
私のまだ観ていなかった、「最後の」ジブリ制作による、宮崎駿の長編作品である。
結論から言おう。
私は、宮崎駿作品の中で、この作品に一番心を揺らされた。
・・・・というか、現段階では、「サマーウォーズ」と並んで、日本の長編アニメの中で格別に私の好みであると断言してしまいたい。
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深層心理的・心理=社会的含蓄、特に「辺境人」性を持つ魔女の文化に関わる形で、ハウルの存在のあり方について参考になりそうなことは、すでに「魔女宅」の記事のほうでかなり書いたことになると思う。
途中までは、ここでこれまで書いた宮崎作品2本と同じくらいに緻密な分析を組み上げながら観ていたのだが、物語のかなり最後の方のある箇所で、私のメモが停止してしまった。
文字通り「絶句して」しまった。
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この映画の主役は、あくまでもハウルであって、ソフィーではないということ。
この作品が、当初は、「時をかける少女」、「サマーウォーズ」の細田守さんを監督として作る予定だったことは知っている。
だが、結果的に、宮崎さんは、「千と千尋」の中で未消化に終わった「あるテーマ」(具体的に言うと、千尋とハクの関係である)を、より率直に描き直したことにもなり、結果的に宮崎さんご本人が一番「やりたいことを思う存分描き切った」のではないかと、私なりに推察します。
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※以下、完全にネタバレです※
終わりの方の、子供時代のハウルとソフィーが遭遇するシーンから読み取れることに焦点を絞って、私なりに解説してたみたいと思います。
この作品世界では、魔女という存在が人の「心」を奪い取ってしまうということが繰り返してモチーフとして登場します。
映画の前半から観ていると、繰り返し反復されるパターンとして明白なのは、空から流星群のように、青白い光の玉が降り注ぐ時というのは、この国の王室付き魔法使い(というより、もはや実質的支配者ですね)、マダム・サマリンが、人の心を誘惑し、「心を奪い取る」ことで「使い魔」にしてしまう、まさにその時なのですね。
つまり、ハウルはある段階で確かにサマリンが校長をしていた魔法学校に入学し、修行を積んだのは確かでしょうが、実はそれ以前の子供時代の早い段階で、サマリンに「目をつけられ」、すでに魂を奪い取られていたのだと思います。
ところが、ハウルが、こうして魂を奪い取られる瞬間に、どうも他のケースとは異なることが生じたようです。
つまり、ハウルが青い光の球を飲み干したケースに限って、ハウルの「心」を実際に仮託した対象は、その瞬間に生み出された(?)、火の神カルシファーに対してだったのですね。
つまりここですでに、ハウルとカルシファーの間に交わされたという「契約」の本質が十分絵解きされています。
1. ハウルはカルシファーに自らの魂を仮託する。
2. ハウルはカルシファーの炎にエネルギーを備給する責任を負う。
3. カルシファーは、その代償として、ハウルの言われるがままに魔力を使ってあげねばならない。
恐らくこの3か条が、ハウルとカルシファーの間の契約内容です。
このことが、マダム・サマリンに対するハウルの「相対的な」自立性(完全に自由にはなれないのですが)が、かなり早い段階から確保できていたことを示唆します。
そして、その、(ユング風に言えば)グレートマザー(大母)的なサマリンに、単に飲み込まれてはしまわないで、ハウル自身の「自我(ego)」を形成、維持する上での心の支えとなっていたのが、時空を越えて表れたソフィーと、ソフィーからの「約束」だったということになります。
ソフィーは、結果的に、前思春期以降のハウルのおぼろげな記憶の中で、女性像の元型(つまり、アニマですね)として機能し続けていたことになります。
アニマというのは、男性に内在する「内なる女性」ですが、実はアニマを「対象化」して思い描き続けられるから、男ははじめて男としてのアイデンティティを形成して行ける、社会的な仮面としての「ペルソナ」(ハウルがいくつもの変名を持つことに象徴される)も形成できるともいえます。
もっとも、ハウルにも手痛い失恋の経験があった。つまり、ハウルですら、「アニマの投影」の対象としてふさわしい現実の女性を見誤ることはあったようです(見かけが二枚目過ぎるから、女性ととりあえず付き合うまでは、魔法使いであることを巧妙に隠した次元でなら、あまり苦労はなかったろうと思われます(^^;)
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いすれにしても、ハウルは「カルシファー=炎を自由に操れる存在」まさに、この前「魔女の宅急便」論で書いたように、バリントの言う「地水火風」という、「前-対象」的なもののうち、何と2つも味方につけている(飛べますしね)。
こうして、ハウルはフィロバットに分類できます。
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今回は、ユング的理解も加味してみましたが、ここで書いたことでしたら、故・河合隼雄先生の「ユング心理学入門」の第8章「アニマ・アニムス」を中心とする章で十分参考書になると思います。
登録日 : 2009年11月01日 00:15:43


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