ガール (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2009年1月15日発売)
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本棚登録 : 8456
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働く女性を主人公にした短編集です。

「ヒロくん」は管理職になり営業課長の肩書きがついた30代の女性が主人公。
年上の男性を部下として使わないといけない女性管理職の悩みやあれこれ思うことが描かれている。
彼女は結婚をしていて、夫は出世など全然意識しない男性。
それと全く正反対なのが、部下の一人の男性で、彼は体育会系でいかにも女の下で働くなんて・・・というタイプ。
あれやこれやありながらも最後は爽やかでホッとできる話だった。

「マンション」は20代の若さでマンションを購入する女性の話。
マンションを買うと決めるまでは「いつ辞めてもいい」と思っていた仕事に「辞められない」切迫感を感じるようになって・・・という話だけど、これもラストは爽やかで良かった。

「ガール」は30代になり、公私共にいつまでも女としての特権が生かせなくなったと感じ始めた女性の話。
確かにあの頃はそういうあせりを感じていたな~と思う話だった。

「ワーキング・マザー」はシングルマザーでキャリアウーマンの女性の話。
シングルマザーという事を武器にしたくないと頑張っている彼女だが、ふとした時にその武器を使ってしまい自己嫌悪に陥ってしまう。
最後はちょっぴり心温まる話だった。

「ひと回り」は一回り年下の新入社員を教育する事となった女性の話。
その新入社員というのが爽やかなイケメンで、社内の女性の誰もが彼にピンク色の秋波を送る。
それを側で見ていてヤキモキする女心。
よく書けているな~と思った。

どれも読みやすいし、読み終わって爽やかな気持ちやちょっと温かい気持ちになれるお話です。
どの女性も大手企業や一流企業に勤めているというのが共通点。
そして、「ディスコ」なんて言葉が出てくることからも時代は今よりもちょっと前の豊かな時代を舞台にしていると思われます。
当時も働いていたので、懐かしいな~と思ったり、共感できる話ばかりでした。
男性が書いてるとは思えないくらい、女性心理とか行動がちゃんと描けているので読んでいて共感できる。
例えば女性同士の会話なんて、特にファッションの話題など、男性が書くといかにも想像で書きましたというのが多いけど、この本では違和感がない。
これは働いている女性を実際に間近で見てないと書けない描写だと思いました。

仕事をしていると何だかんだ言って、やはり男社会だな~と思います。
そんな男性たちとうまく折り合いをつけながら、時にはぶつかりながら仕事をする女性の姿がちょっとユーモラスに、だけど等身大で描けていて好感をもちました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 奥田英朗
感想投稿日 : 2013年7月11日
読了日 : 2012年7月15日
本棚登録日 : 2013年7月11日

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