危険な童話 (新潮文庫 あ 7-16)

著者 :
  • 新潮社 (1991年4月1日発売)
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感想 : 14
3

ブラックな10話。
タイトルから童話にちなんだブラック小説?と思いがちだけど、このタイトルは最終話からとったもの。
大体は男と女にちなんだ、大人向けの話となっています。

「茜色の空」
子供の頃、茜色の空の下で「死ぬまで友だちでいよう」と誓った二人の少年。
それから40年ぶりに同窓会で出会った二人は、一人は実業家として成功し、一人は医師になっていたが資金繰りに苦しんでいた。
そんな事情を聞かされた実業家の男性は40年ぶりに会った友だちに千五百万の金を融通してくれると言う。
「困った時には必ず助け合おう」と約束したからと-。

「夜の散歩人」
主人公の女性は突然、刑事の来訪を受ける。
刑事は「三年ほど前から首都圏を中心におかしな殺人事件が起きている」と言う。
そして、犯行の動機は分からないが、殺される人の名前にはある共通点があると。
それは、ローマ字で書いた時、イニシャルがJCということ。
主人公の名前も正にイニシャルがJCだった-。

これは最初に出てくるあるモノから、JCとは何を意味するのか分かってしまいました。
そして多分・・・と想像した所、ラストはそこからちょっとズレていて、さすが~と思いました。

「涼しい眼」
恋人と訪れた事のある軽井沢の別荘を16年ぶりに妻と訪れた男性の話。

「法則のある死体たち」
建築の現場監督をしている男性が主人公。
彼はある日、金魚の死体を見かける。
その後も、蛙や蛇と立て続けに生き物の死体を見た彼はそこにある法則を見出す。

「戻り道」
散歩が趣味の老人はある日、垣根の中から浴衣を着た女性に声をかけられる。
それから彼は子供の頃の出来事を次々と思いだしていく。

「女に向かない仕事」
見栄っ張りで怠け者の妻にうんざりきている男性。
彼はある日、ゴミ捨てのことで妻と大ケンカして-。

「窓の灯」
出張から帰ってきた独身男性はレストランで食事をしている際、点いているはずのない自分の部屋に灯りが点いている事に気づく。
自分が出張前に電気を点けっぱなしで出たのか、それとも中に誰かいるのか?
思いめぐらす男は向いに座る男に話かけられる。

「越前みやげ」
東尋坊を訪れた男性はそこで岩場に佇む一人の女性を見かけ、「危ない」と声をかける。
女性が自殺しにここに来たのでは?と心配する彼はその後彼女と観光する事となり、二人は越前みやげを買う。

女は大きな壺を。
男は小さな壺を。

「蛇」
2月22日だけは絶対に他の女と寝ないで欲しい。
そんな亡くなった恋人の言葉を守っていた男性。
しかし、長い年月が流れ、その約束が薄れた時、彼はその日にある女性と関係をもってしまう。

「危険な童話」
主人公の主婦に「おばちゃま」となついている同じマンションに住む9歳の女の子。
女の子の母親はあまり上等な女でなく、「放送局」とあだ名のつく噂好き。
なるべくつきあいたくはないが、女の子は可愛らしい。
でもある日、近所にその子しか知らないような我が家の事が噂になっている事を彼女は知り女の子を警戒するようになる。
そんなある日、彼女は女の子と童話「赤ずきんちゃん」について話合う。

この話が一番面白いと思いました。
表紙のイメージがないのが残念ですが、この本の裏表紙もかなりブラック味を出しててイイと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 阿刀田高
感想投稿日 : 2013年7月3日
読了日 : 2013年5月16日
本棚登録日 : 2013年7月3日

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