ホームシックシアター

著者 :
  • 実業之日本社 (2007年11月20日発売)
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本棚登録 : 69
感想 : 17
4

全て女性が主人公の6話からなる短編集。
この作者の本は4冊目ですが、今まで読んだ中でこれが一番面白いと思いました。

「蝉しぐれの夜に」
子供が出来なくて悩む主人公の女性とそんな彼女に無神経な言動を繰り返す親友の女性。
その言動の裏にあるものを主人公はある時偶然に知る事となる。

夫を愛していて、その夫の子供が出来ない事に苦しみ涙する女性の姿がとてもいじらしく感じられました。
ただの無神経で何も考えてないと思われた親友の女性にも彼女なりの悩みがあって-。
人はつらい事や心にわだかまりがあるとどうしても他人に優しくなれない・・・そんな心情もよく分かりました。

「ホームシックシアター」
夫は単身赴任のため、自分の好きな事をして一人暮らしを満喫している主婦。
彼女の楽しみは夜中にホームシアターを見ること。
そんな彼女の隣の部屋に一人の女性が引っ越してきた。
実はその部屋は以前人殺しがあった部屋で、事件の後、住人が次々と出て行ったという経緯があった。
主人公自身も誰か分からない相手から入居後まもなく嫌がらせをされていて-。

これは結末に驚いた。
「ああ、そうか・・・、そうだったのか・・・。なるほどね~」って感じ。
これを読んでパッと浮かんだのは「楽あれば苦あり」って言葉。
普段からよくその言葉を感じながら生活しているせいかも・・・。
徹底して自分の嫌な事はしない。好きな事ばかりする。
そういう生活っていつかツケがくるのかも・・・。
表題作でもあり、これが一番面白いと思いました。

「オーバーフロー」
デパートの靴売り場で働く女性が主人公。
彼女は婚約者と同棲していたが、彼の以前つきあっていた女性が部屋に押しかけて来て彼は一時家を出る事にした。
彼の身を心配する主人公は婚約者の姉から彼がいなくなった本当の理由を聞かされて-。

「セルフィッシュ」
主人公はお金持ちのお嬢様。
彼女は臓器提供意思表示カードにサインをした後、一人の男に声をかけられる。
彼の妹はレシピエント-臓器提供を待っている患者で、彼は臓器提供に同意した彼女にお礼をしたいと言う。

これは大体思っていた通りの結末。
でもその思っていた通りの結末があまりに衝撃的で・・・こうくるか、という感じだった。

「小指の代償」
親友が事故で小指をなくし、その場にいた事で罪悪感を感じる主人公とその婚約者は婚約を解消した。
これはドロドロした話?と思ったら意外にも・・・という話。

「おさななじみ」
おさななじみと再会した事で甦る過去のあれこれ、母親との確執。
これもイイ話系で、この話が最後にある事で読後感は良かった。

この本は人によって、この話がいい、好きというのは分かれそう。
それによってその人の普段の好みとか分かりそうで・・・。
シェアしてみたい本だと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 春口裕子
感想投稿日 : 2013年7月3日
読了日 : 2013年5月15日
本棚登録日 : 2013年7月3日

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