13話の短編集です。どれも不思議なストーリーで、中にはついていけなくて、置き去りにされてしまうものもありました。一番不思議でないのが、1話の「娼婦の部屋」。吉行さんの本にはよく娼婦が出てきますが、雑誌記者の「私」が娼婦の秋子のもとへ通う話。その秋子は何度も娼家を出て、素人になり、そしてまた舞い戻り・・・、そしてまた・・・。「私」は、それを多少の感情のブレを持ちながらも淡々と語ります。「手毬」「出口」「紫陽花」「花束」も不思議で、どう考えていいのか分からない所もあるのですが、この4つは、わりと好きです。他のストーリーもよく分からないと思いつつ、読み進まされてしまう不思議さ。それも、少し猥雑で隠微な余韻がある不思議さ。怪しい魅力をもった男性について行っているような、そんな本です。
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カテゴリ:
吉行淳之介
- 感想投稿日 : 2007年6月1日
- 本棚登録日 : 2007年6月1日
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