近代科学の源流 (中公文庫 い 104-1)

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  • 中央公論新社 (2007年9月22日発売)
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感想 : 7
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ギリシア・ローマ世界が崩壊すると、自然哲学などその知的遺産は、ビザンツを経由してイスラム世界に継受された。その成果はヨーロッパ世界に「逆輸入」され、ルネサンス、科学革命を経て近代西洋科学が勃興する。

なるほど。では、逆輸入の契機は何か。
フリードリヒ2世のイスラムびいきエピソードなどを挙げつつ「十字軍が東西を繋いだ」などと訳知り顔で言いたくなるところ、十字軍の文化史的意義について著者曰く、
「彼らは多く旅したが、しかしほとんど何も学ばなかった」(p255)。

著者が西洋近代科学成立の画期とする「12世紀ルネサンス」については、何も知らなかったので、大変勉強になった。
それから、スコラ哲学については思弁のための思弁といったイメージしかなかったのだが、神学と自然哲学の折り合いをそれなりにつけるという機能もあったのかもしれないなと思われ、これも勉強になった。

内容は知的刺激に満ちている上、文章も流麗。いい本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2017年4月23日
読了日 : 2017年3月23日
本棚登録日 : 2016年10月22日

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