レビュー by 小川かずほさん
ミステリーの中でも「本格派」に分類される作家さんの作品をあまり得意としない自分が、
有栖川有栖を読む日が来ようとは。てかちょいと昔読みました。否、だいぶ昔、かなり昔、
それこそ「月光ゲーム」とかの時代以来だから、10年以上昔の話になります。
年齢とともに食べ物の好みが変わるように、読書の好みも変わるかも。なーんて。
基本、例えば密室の推理モノは好きでもなければ嫌いでもありませんが、
正直寝る前の読書人間としては、あまり頭を使ってあれこれ考える内容は、ちょっと・・・。
実はこの作品、大好きな北村薫がからんでいます。だから買ったんだけどねー。
「猿の手」という海外のお話。怪奇小説の名手、ウィリアム・W・ジェイコブズ作。
所有者の願いを3つだけ叶えてくれるかわりに、
その願いに見合った不幸も降りかかる、という内容の解釈について、
有栖川氏と北村薫が、作中で意見交換をしています。もちろん登場人物は別の名前ですが。
正直車体水没の犯人や、密室殺人の謎や、地震にからめた推理なんてあまり興味はなく、
「猿の手」をモチーフにしたミステリーとしての、著者の引き出しの広さが印象に残りました。
すなわち、願いをかなえることと同様の不幸や災いが自身に起こること。
それは真っ当に生きる人間も、そして良からぬことを企てる犯罪者も同じです。
そう考えると、「猿の手」にからめたストーリー展開が、
トリックうんぬんではなく話の全体として悪くない感じがします。
「妃は船を沈める」っていうタイトルも好き。
妃は作中の妃沙子のこと。彼女がね、”猿の手”の所有者なのさ。
船を沈めたし、それは自分の乗った船でもあったし。
超自然現象的な解釈は私もあからさまな描写なし派。
★★☆☆
レビュー登録日 : 2011年05月26日
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