レビュー by kazuoeさん
筆者は普通のサラリーマンだったが、突然出家し永平寺に入る。頭をまるめ、門をくぐる一日前からの様子、永平寺での修行の生活が事細かにつづられている。 先日、永平寺に行って献茶式に出席し、そのとき感動したことが、彼の言葉によって何故だったのかがわかったような気がする。 永平寺での修行は、朝起きてから夜寝るまで、すべて、起床も、洗面も、食事も、入浴も、仕事も、もちろん座禅も、トイレさえも定められたとおり行わなくてはならない。「起きて半畳、寝て一畳」の世界の中で、先輩雲水の暴力ともいえる教えを受けながら自己を埋没させていく。すべてのことが、定められたように進み、すべての雲水が自分の立場を心得、自己を捨てそれぞれの役割に徹することによって永平寺が存在している。 そこには、個人の感情などさしはさむ余地はない。必要最低限のものだけにそぎ落とされた物欲、 法堂での、「水盤に揺らめく水のように大きく静かに波打つ」あの読経も、 とぎれることなく続く、法要の流れも、廊下を足袋はだしで歩いても、ほとんど汚れなかったのも、 雲水さんの修行のなせることだったのだ。 読んだからといって私の生活も、物欲も相変わらずで(おいしいものは食べたいし、靴は欲しいし・・・・)何も変わらないのだけれど、あの冷え切った空間を揺るがしていた読経の声は、忘れないと思う。
登録日 : 2007年01月20日 22:57:48


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