<あちら側とこちら側>のパラレルワールド、大事な人と切り離される喪失感に強く共鳴する。
<すみれの存在が失われてしまうと、ぼくの中にいろんなものが見当たらなくなっていることが判明した。まるで潮が引いたあとの海岸から、いくつかの事物が消えてなくなっているみたいに。ぼくにとってもはや正当な意味をなさないいびつで空虚な世界だった。>
<ぼくらはこうしてそれぞれに今も生き続けているのだと思った。どれだけ深く致命的に失われても、どれほど大事なものをこの手から簒奪されていても、あるいは外側の一枚の皮膚だけを残してまったくちがった人間に変わり果ててしまっていても、ぼくらはこのように黙々と生を送っていくことができるのだ。手をのばして定められた量の時間をたぐり寄せ、そのままうしろに送っていくことができる。日常的な反復作業として-場合によってはとても手際よく。>
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- 感想投稿日 : 2017年7月16日
- 読了日 : 2017年7月16日
- 本棚登録日 : 2017年3月11日
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