実存と保守 危機が炙り出す人と世の真実

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2013年4月11日発売)
4.14
  • (3)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 36
感想 : 2
5

2013年4月18日発刊の西部邁先生の書き下ろし。

いまや保守論壇に登場する西部邁先生も、若い頃の一時代は学生運動を先導し左翼過激派として活動していた。

本書は僕にとって難易度が高く、一割も理解できていないと思うけれども、この文章の力強さというか、文章の持つ魔力に引き込まれ厭きることなく読み進めることができた。

何と言っても、言葉の定義をしっかりとして、その上で話しを進められている点については、非常に勉強になった。
その難易度からくじけそうにもなるのだけども、所どころ、いいタイミングで著者の幼少期から青年・壮年期そして老年期における体験を第三者的に客観的に述べる物語も挿入されていて、緩急ある書物となっている。

現在の社会情勢と西部邁先生の思想とを織り交ぜて、目次にあるとおりの論説が累々と述べられている。

本書終末の句は【各々方、そろそろ「死ぬ気で生きる」御覚悟を召されよ】である。
出だしから終いまでとにかく達観したような、力強い筆捌きに感動した。

----------------
【内容(amazonより)】
「伝統への気遣い」と「状況への関与」とが相俟って、人間の生き方を偏頗なものでも場当たりなものでも巫山戯たものでもないものにする。人間精神が正気を保つには抽象に降りる作業と具体に昇る作業との両方が必要となる、といってもよい。保守思想と実存思想は互いに協力して、人間のパーソナリティ(人格)に、単なるペルソナ(仮面)ではなく、死へ向かって「良く生きる」者にふさわしい輪郭を与えるのである。
----------------
【目次】
はじめに:「実存と保守」そして「実践と解釈」について語る理由
危機を定義せぬままに危機について喋々するなかれ
故郷を喪失しても共同体への郷愁は残る
孤独は人間の特権であり連帯は人間の義務である
国家は非常事態において国民は危機の真相を知る
国境を超えると「わずかな強調」の楽しさと「おびただしい敵対」の苦しみとが待っている
破壊的想像の作り出す非常事態の連続において不法・不徳への渇望が頭をもたげる
「戦争の思い出」が同義の在り処を指し示す
完成に近づくこと能わず誤謬を犯しやすきが人間の宿命である
宗教は孤独な精神にとって良い麻薬となろうが、摂取しすぎると猛毒に襲われる
おわりに:「失業と飢餓」そして「差別と疎外」について語らなかった理由
----------------

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年9月4日
読了日 : 2013年9月2日
本棚登録日 : 2013年9月2日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする