ドラえもん[スネ夫編] (小学館コロコロ文庫 ふ 1-74)

  • 小学館 (1999年11月16日発売)
4.04
  • (8)
  • (11)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 79
感想 : 7
4

愛すべき脇役たち。スネ夫自体が物語の動きに関わることはジャイアンほどではない。
しかし、スネ夫のもつ個性が、時に人間の生活に与えるヒントであったり、そしてそんな人間に向けられる道具のヒントになっている。
スネ夫の特徴はその生まれに加えて、巧みなことばや如才ない振る舞い方にある。お金持ちであるから、様々な機会や経験に恵まれているし、自分の身に災難が降りかからないように人間関係を構築する力は相当に高い。
そんなスネ夫がいるからこそ、のび太の夢の実現が一際輝くことになる。お金で日常できること以上のことを、非日常へと飛び立つきっかけの多くはスネ夫の生れに基づいた日常の保証があるからである。スネ夫がいなかったら、ドラえもんのもつ道具の輝きは一気に失せてしまっただろう。そして、スネ夫の如才ない巧みな振る舞いがあるからこそ、それを非日常の力でひっくり返すことができるのだ。
ドラえもんの道具というのは日常の中にはありえないものであるから、スネ夫の振る舞いを崩すことは決してできない。スネ夫がことばを発するとき、腹の中ではどんな悪態をついているのか、描写なしでは知ることはできない。人間の生活とはすべてこのようにできている。だからこそ、のび太のような人間は泣き寝入りし地団駄を踏むより他ない。そんな時に、そういう固定されたルールをぶち壊すのが、ドラえもんという存在である。そういう意味で、このスネ夫の存在というのは、欠かせない物語の基盤なのである。
何より、ひかれたのは、肝付氏の解説のことばである。吹き出しからそのひとの声が聞こえてくるというのはなんと声優冥利に尽きる体験だろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2017年2月7日
読了日 : 2017年2月7日
本棚登録日 : 2017年2月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする