クヌルプ (新潮文庫)

  • 新潮社 (1955年4月1日発売)
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本棚登録 : 757
感想 : 61
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初めて見た作品だったので。とはいうものの、『車輪の下』に次ぐ出版数を誇るとか。
なんて愛おしい存在なんだろう。ただ与え続けるという役割を与えられた、このクヌルプという存在は。
彼は自分を探したいだの、世界が見たいだの、そんな目的をもって旅人をやっているのではない。旅こそ彼の目的であり、望まれたことだ。だから、憧れはできても彼のように旅人に誰もかれもなれはしない。まさに在り難い。迎える人はきっとそれゆえに嬉しいのだろう。
トリックスター的存在、いわば、非日常を体現したものの物語。けれど、非日常が生きるのは日常の中。本当に彼は一体誰なんだろう。風の又三郎のように、一陣の風のように、さっと吹いてさっとどこかへ過ぎ去ってしまう。
そして、そんな存在にも探究のまなざしを忘れないヘッセの愛を感じる。彼のまなざしは、子ども心を忘れない無邪気な童話的なところがある一方で、ただひたすら「考える」そのことをし続ける、力強い一途なまなざしがある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 物語
感想投稿日 : 2014年12月20日
読了日 : 2014年12月20日
本棚登録日 : 2014年12月20日

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