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レビュー by kfnksさん
西川美和監督作品。
村医者として無免許で営業していた鶴瓶演じるモグリの医師が突如失踪する。彼はいったい何者だったのか、というお話。
ともすれば鶴瓶が善人として持ち上げられて感動話になりがちなテーマだが、そこをしっかりグレーなものとして描いているのが良い。白黒の判断がつきかねるものを徹底的に描き出してから、さあ何がどうだったのかちゃんとお前の頭で考えろ!と提示するような西川監督の姿勢は『ゆれる』の時と共通していると思う。バランス取りの難しい話が真摯に、そして面白く描かれていた。
多くの人が言っている通り監督の独特のモチーフとして「グレーなものを掘り下げて描く」という姿勢があると思うが、もうひとつ「主観が世界を決定する」という考え方があるように思う。
『ゆれる』でもオダギリジョーの主観が重要な意味を持っていたように、今作においても鶴瓶失踪後に周囲の様々な人間達の視点で彼の人物像が語られていくことで、観客に対して、善行というのは「誰にとって」善行なのか?悪行というのは「誰にとって」悪行なのか?という問いかけが行われているようにも感じた。
鶴瓶の「おれはにせものなんだ」という告白に対して瑛太がその言葉の意味を取り違えるシーンなどは象徴的で、後で刑事が言うように「みんな自分の見たいものしか見ていないんだ」という言葉はそのまま観客である僕にも当てはまるように思う。つまり最終的にはどのような形にせよ事態に関わった人の数だけ真実があり、彼らの主観がその善悪をそれぞれ決定していくしかないのであって、そもそも物事を「これは善」「これは悪」と部外者が一般論で断ずることそのものに意味がない、という着地なのだと自分には感じられた。
西川監督作はズシンとくるようなトーンではなくむしろふわふわとした印象があるが、体の節々にその映画のふわふわが付着していて鑑賞後にも作品のことをずっと考えてしまうような、そんなところがある。
レビュー登録日 : 2012年02月02日
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