幸村佳苗さんのイラストが好きで、ジャケ買い。大当たりでした。
受の黒江がとにかく、ふてぶてしく強く、まったくと言っていいほど甘くなく、そして絶対になびかない。そこが最高に好みでした。底辺の生活を経験しているからこそ、したたかに生きたい、利用できるものはすべて利用したい、というモノローグが何度も出てくるのですが、同時に、自分なんてどうなってもいい、どうでもいい、好きにすればいいと自分をも愛せない感じが素敵。でも、メランコリックにならないのが、また。くうう。
攻は二人。一人は武闘派のインテリ経済ヤクザ(すごい肩書き)で、もう一人は高校からの唯一の友人。このヤクザさんも、惚れてるとか好きだとか言いながら、ずっと怖いのがよかったです。ほだされないというか。何回か、ヤクザの「制裁」について書かれているのですが、そこにも甘さは微塵もなく、そこがかえって良かったです。
個人的には、もう一人の攻の八束が大変好みでした。高校から執着していて、刑事になった(捜査一課)のに、黒江のそばにいたいからとフリーの調査官に転向し、黒江の犬のようにそばを離れないけれど、蓋を開けたら犬でもなんでもない、ただの執着の塊という。しかも、身長は190cm越え、ガタイも良くて、オフィスのドアを身を屈めてくぐるタイプ。「気持ち悪い」と言われれば「俺もそう思う」と答えてしまうような。「10年執着してるやつは違うね」と揶揄されても「15年だ」と答えてしまうような。いまいち掴みきれない八束が、好みにどストライクでした。
非常に濃ゆい内容で、まったく甘さがない、カカオ100%みたいな本です。ハードボイルドで素晴らしかったです。
- 感想投稿日 : 2017年4月27日
- 読了日 : 2017年4月27日
- 本棚登録日 : 2017年4月27日
みんなの感想をみる