ゲルニカ物語: ピカソと現代史 (岩波新書 新赤版 155)

著者 :
  • 岩波書店 (1991年1月21日発売)
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本棚登録 : 60
感想 : 7
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11/07/19
予備知識無しでbookoffにて100円で購入。大雑把な概要は(絵画の方の)ゲルニカの芸術性や技術面の内容では無く、スペイン内の紛争におけるピカソの演じた役割とドイツなどの連合軍によってゲルニカ(町の方)が蹂躙された後の政治及び社会的風景におけるゲルニカの訴えたメッセージとその役割を海を挟んだ大陸の東西からの視点で描いている。


要は社会へどのようにゲルニカが関わったか、そして歴史の方はどう進んで行ったかに内容が絞られているので、ピカソの解釈だのといった芸術面の展開は一般的な素養の範囲内で皆無に等しい。ゲルニカの製作秘話が若干描かれている点、ピカソの一連の版画ワークについての言及や資料といった内容は一般的には絵描きという側面の認識が強いピカソという人を知るには興味深い資料と映るのではないかと思う。


歴史にはさほど興味がなかったので、退屈な書き方になってしまっているけれど、絵画と社会という、つまりビジネスにおける絵画といった見方を考えている人間にとって、お金の為の製作と、尊厳の為の製作とが入り乱れた戦時中のピカソの懊悩とそれらビジネス面を一蹴したピカソの行動などは克明に記述されているので、自らのアートマネジメントを考える際の参考になるのでは無いかと思う。


無理矢理安値で国から領収証を切ってでも(本当は無償を望んだ)ゲルニカをどうしてもスペインの民衆のものにしておきたかったピカソのの格好良さは十分に伝わった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年7月22日
読了日 : 2011年7月22日
本棚登録日 : 2011年7月22日

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