一九三四年冬-乱歩 (新潮文庫 く 20-1)

著者 :
  • 新潮社 (1997年1月1日発売)
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感想 : 48
5

― 1934年(昭和九年)冬、東京。
 雑誌「新青年」に頼まれた小説の原稿が進まず、衝動的に逃亡を図った江戸川乱歩(40歳・作家)。
 都心のホテルに一時避難し追手からは逃れたものの、このままでは作家の名が廃る。
 何としてもこの「梔子姫(くちなしひめ)」(←タイトルだけは決まってる)、完成させなければ… ―

 (※この作品に登場する「乱歩」はほぼ著者の妄想の結晶に近く、実在する「江戸川乱歩」とは多分に異なる人物である恐れがあります)


何というか、一言で率直に申せば、萌えました。

乱歩氏のどこまでも等身大の40歳な感じといい、華栄青年の絶妙な魅力といい、
昭和初期のやや陰のある独特の雰囲気を醸し出す文章といい、私の心をがっちりホールド。
物の成り行き的に読み出したはずが読み進むほどにテンションが上がり、読み終わる頃には大好きな一冊となっていました。
(※)の点さえ大丈夫であれば、全ての乱歩愛好者におすすめしたい小説です。
また文中に乱歩関連の小ネタが散在しているので、乱歩マニアな方ほど楽しめるはず。

ちなみにこのどうみても乱歩作品としか思えない作中作「梔子姫」は完全に久世さんのオリジナルだそうです。
ほんと、久世さんの乱歩に対するありとあらゆる種類の愛が結晶化した作品だと思います。
(2006年 3月)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2009年9月16日
読了日 : 2006年3月
本棚登録日 : 2009年9月16日

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