最愛の子ども

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年4月26日発売)
3.76
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本棚登録 : 470
感想 : 58
4

読了したのでレビュー。

最後の最後まで、異性愛規範におさまってメデタシメデ
タシなお話ではないのか?という疑いを持って、不快を予感しながら拝読した。
この作者の文体なのか、言葉選びのセンスなのか、時折古めかしい表現が挿入されている点だけ、好みに合わなかったので☆4つとした。

海外小説だったら
「さっさと主人公のセクシュアリティ決めて動かせ!」
と、エージェントがダメ出ししてるかも知れない内容である。

ゆらぎながら≪わたしたちのファミリー≫の物語を見守る女子たちと、色々な傾向を持った『未満』を自覚(というより見守り女子たちの妄想によって補完捏造された)ファミリーの三名の記録。
そして、周辺視野の画像のように提示される、女子への抑圧、男子への抑圧。女の子たちが大人たちへ向ける、基本的には抑圧者を警戒する視線。

ガッツリ娯楽としてラブラブ百合を求めたり、もだもだする人間関係を見守る級友ドラマ、等を期待すると、

『大外れ』

だと感じるかも知れない。

筆者としては、『リアル系百合未満文学』、として評価できる作品である。異性愛規範の押し付けではなく、かといってセクシュアリティの多様性を言祝ぐこともしない、セクマイ文学としては慎重な立ち位置を評価したい。

人として心が乏しい美少女と、抑圧側の男子の『こういう風にするものだから経験しておこう』的行為のシーン。
これと、その後に描写される別のキャラクターたちによるシーンの暖かさの対比は、巻末の名場面といえよう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 娯楽小説ファンタジー
感想投稿日 : 2017年10月8日
読了日 : 2017年10月8日
本棚登録日 : 2017年9月29日

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