グリム童話の世界: ヨーロッパ文化の深層へ (岩波新書 新赤版 1041)

著者 :
  • 岩波書店 (2006年10月20日発売)
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19世紀にグリム兄弟がメルヘンを蒐集した動機が、古ゲルマンの精神を今に伝えようとしたことにあることを知って興味を持った。ナポレオンのドイツ蹂躙を経験したことが直接的なきっかけらしいとのこと。ある意味民族運動の先駆け。当時に伝わるメルヘンを、中世キリスト教の影響前の状態に還元しようとする意志と熱意に感嘆する。
たぶん日本で例えるなら、ほぼ同時期に本居宣長が行った事績に近いかと思う。宣長は、仏教が影響する前の日本の原風景を知ろうとして古事記等の研究を行ったという。
当然今となってはグリム兄弟についても宣長についても、その目的に対する批判は簡単にできるだろう。しかし当時にあっては、メルヘンなり古事記なりの真理深層に至ることがそれぞれにとって貴重な体験と発見であり、また輝かしい研究の対象だったことが想像される。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年6月4日
読了日 : 2017年6月4日
本棚登録日 : 2017年5月27日

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