アメリカン・コミュニティ: 国家と個人が交差する場所

著者 :
  • 新潮社 (2007年11月1日発売)
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感想 : 17
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タイトル通り、アメリカのコミュニティに焦点を絞り書かれた一冊。
全体像ではなく特定の街や区域に絞って書かれているため、概要が書かれている本よりも身近な感覚で読む事ができる。

例えば、”宗教の信者達が作った街”、”柵で囲われた街(Gated Community)”、”ディズニーが作った街”。
これらは外界との交流は取りながらも、そこにひとつの閉鎖空間を人工的に生み出している。
長い目で見た時に、協調性という点では心配があるが、価値観の共有や安全を求め、このような許可証が必要な街は今後も増えるのだろう。
何ともSFのような話だが「セキュリティー完備の大型マンション」という形で、実は日本にもGated Communityに近いものは存在している。

意図的に閉鎖された空間以外でも、治安の悪い地域が自努力で蘇った街、大農場や孤島の街、巨大教会(Mega Church)など、様々な場所にスポットをあて構成されている。
アメリカについて語られる時、『宗教』と『貧富の差』という言葉がいつも登場するが、まさに取り上げられているどのコミュニティもこのふたつの柱が顔を出す。
また、著者が繰り返し使用している「Counter discourse(対抗言説)」という言葉。
アメリカでは、ひとつの思想に対しては必ずそれに反対する論理が現れる。
これはアメリカに限ったことではないが、それが顕著であるアメリカの多種多様性がアメリカという国の強さでもあり、弱さでもあるのかもしれない。

文化や思想の分析ではなく、シンプルにコミュニティの紹介としてシリーズ化をしたらアメリカが、そして世界の素顔をもっと知る事ができるのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本と世界
感想投稿日 : 2010年2月11日
読了日 : 2010年2月11日
本棚登録日 : 2010年2月11日

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