精霊たちの家 上 (河出文庫 ア 8-1)

  • 河出書房新社 (2017年7月6日発売)
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感想 : 11
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大雑把に把握すると、女性三代記にして男性一代記(夫として父として祖父として)。
女性はみな個性的。
彼女らの性格は生まれつきのものに加え、育った時代の雰囲気の現れにもなっている。
グラデーションとしては、牧歌的→政治的。夢→悪夢。
三代の女性に対して背骨としてエステーバンがいるが、彼は夫として父として祖父として活躍呻吟する。
もう少し詳しく把握すると、

1-4章
 ……マジカルで牧歌的な生活。クラーラとエステーバンの世代。
5-10章
 ……身分違いの恋愛と社会主義。ブランカ、ペドロ・テルセーロ、ハイメとニコラスの双子、アマンダの時代。
11ー14章・エピローグ
 ……リアリスティックに展開する軍事クーデターと独裁。政治的惨劇。アルバ、ミゲルの時代。エステーバンは老いる。

場所としては、
首都。お屋敷町にある「角の邸宅(おやしき)」。
南部ラス・トレス・マリーアスの農場。
を行き来する。

時代としては、
資本主義→数年間、社会主義の大統領(ただし共産主義的独裁ではない)→軍部の独裁(独裁は一時のことだろうと資本家ははじめは楽観)
wikipedieによれば、
「チリ・クーデター(スペイン語: Golpe de Estado Chileno)とは、1973年9月11日に、チリの首都サンティアゴ・デ・チレで発生したクーデターのこと。世界で初めて自由選挙によって合法的に選出された社会主義政権を、チリ軍が武力で覆した事件として有名である。」→ピノチェト独裁政権。

連想できるのは、「百年の孤独」「嵐が丘」「赤朽葉家の伝説」。
エステーバンには「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ・ルイスをイメージしたりした。

一冊で三色。大満足。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学 海外 /南米
感想投稿日 : 2017年11月9日
読了日 : 2017年11月9日
本棚登録日 : 2017年8月6日

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