毛皮のエロス~ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト~ [DVD]

監督 : スティーヴン・シャインバーグ 
出演 : ニコール・キッドマン.ロバート・ダウニーJr 
  • ギャガ・コミュニケーションズ (2011年10月17日発売)
3.56
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本棚登録 : 181
感想 : 45
4

ニコール・キッドマン、いい女優だなぁ。
「パニック・ルーム」然り、「ドッグヴィル」然り。(「アイズ・ワイド・シャット」なんていうアレな映画もあったけれど。)
翠の眼。腰の細さ。夫も子もいるのに、少女のような風貌。無垢という言葉すら浮かぶほど。
それが変態性を内側から暴かれていくのだから、堪らない。
こういう役選びができるのが、名女優。

邦題はくだくだしいが、タイトルは「ファー」つまり「毛皮」。
「誘惑」とつけたのは、いまひとつ。
「毛皮の誘惑」ではなく「毛の誘惑」でもいい。
ヌーディストに近づくプロローグはさておき、登場時、夫を立てる優等生。
ディアンと呼ばれるときは妻。ダイアンと呼ばれると少し創作的自我が疼く。
疼く対象は、錆びたパイプとか、穴とか。(「イレイザーヘッド」みたい。)
ここには性的不満足やイカモノ志向も見過ごせない。
パイプの毛の詰まり。
犬の毛が詰まっているんじゃない、と同じアパート上の階の新居者(「エレファントマン」に似た不気味なマスク)に電話。
毛に埋もれた鍵……不思議の国のアリス的。
アリス的にブルーにおめかしして会いに行ったのは、ライオネル。
彼は多毛症、畸形小屋で見世物にされていたことも。(「スター・ウォーズ」のチューバッカ、狼男。)
語り合う。
ダイアンには露出壁があり、あなたを窓から見て尋ねたいと思ったわ。
顔に痣のある少年の記憶。
朝帰り。「また来い、撮影がまだだから」
やがて家族ぐるみの付き合いになり、夫は複雑な感情に。
畸形の集うパーティに。家にお招きも。
死の前、頼まれて、身体中の毛を切っては剃る。
裸になって当たり前のように性行為を。
彼の死後、撮影行為は高まり、畸形、ヌーディストへ。

他。
ダイアン・アーバスといえば、「シャイニング」に影響を与えた双子の写真だ。
決して伝記ではない、創作。
「あなたの秘密を教えて」という夫婦のやりとり。
奇特な被写体、ではなく、被写体に向き合う本人の意気、といったものがある。
だからこそ若くして死なざるを得なかった。
本気でポートレイトを撮り、向き合うことの過酷さ。

その後ユーチューブで調べたら、なんと森田童子がダイアン・アーバスについて語る音声が!
アーバスの自殺、窓から見える自由の女神、ミレーの晩鐘。
全体のための大きな神ではなく、個人にとっての祈りの対象だったんだ、という話。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 洋画
感想投稿日 : 2016年8月24日
読了日 : 2016年8月24日
本棚登録日 : 2016年8月24日

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