できることをしよう。―ぼくらが震災後に考えたこと

  • 新潮社 (2011年12月16日発売)
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なかでも、とりわけ印象に残ったひと言を紹介します。
福島県高等学校野球連盟会長
岩渕賢美さんの挨拶のなかに登場した一節です。

「もとより、高校生の未熟なプレーに、
 福島県民を勇気づける力などはありません。
 しかし、感謝の気持ちを胸に、若者らしく、
 はつらつと、爽やかに、謙虚に、礼儀正しく戦う姿は、
 必ず見てくださる方々の心に響くものと信じます」

すごいことを言うなぁ、とぼくは驚いてしまいました。
「君たちのプレーに福島県民が励まされる」と
まとめるほうが挨拶としてはふつうだと思います。
しかし、高校生のプレーに、そんな力はない、と。
見ていただくべきは、謙虚な姿勢と感謝の気持ちだと。

聖光学院の斎藤監督のおっしゃった
「震災を簡単に背負うのは傲慢だ」
ということばと通じる気がします。

「宣誓、2011年、思い返せばあれから4カ月、
 とてつもなく長く、そして、
 とてつもなく短い時が流れ、
 ここ、福島にも待ち遠しかった夏が
 ついにやってまいりました。

 東日本大震災で、被災された方々、そして、
 その中にいる福島球児の仲間たちと共に、
 新たな季節を迎えることができ、
 いま、心から感動しています。

 思い返せば、この数カ月、
 ほんとうにがっかりするような嫌な思いをしました。
 しかし、その一方で、ほんとうにうれしく、
 感動に溢れる、人とのふれあいもありました。

 そのたびに、わたしは生きててよかった、
 と「生(せい)」に素直に、
 感謝することができるのです。

 まだまだ福島の困難は続きますが、
 この特別な夏を89校の仲間たちと共に、
 支え合う夏、助け合う夏、思いやる夏、
 勝ち負けという枠を取り払い、
 人と人とのつながりを大切にした
 日本一熱い夏にすることをここに誓います。

 平成23年7月13日
 選手代表、学校法人松韻学園福島高等学校
 硬式野球部主将、塩瀬龍」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時事問題
感想投稿日 : 2012年1月20日
読了日 : 2012年1月20日
本棚登録日 : 2012年1月20日

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