昭和事件のナイロンザイル事件をモチーフにした作品。ザイルは切れたのか切られたのか、その一点を軸に置きながらこうした重厚な人間ドラマと恋愛ドラマが交錯する作品を書き上げるとは井上靖氏の才能に唸らされる。
本作品は山岳小説に位置付けられ、魚津を交差路に様々な人間関係が描かれるが、特筆すべきは魚津と小坂の美那子に対する複雑な感情であろう。美那子はやや魔性的であり、氷壁はひょっとすると魔性の女性の象徴であり奥穂高に執着し挑み飲み込まれた男たちを描いた恋愛小説なのかもしれない。
それにしても今の時代、魚津のような社員が居たら常磐のような豪傑が居たとしてもすぐ馘首であろうと思うのであった。。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2017年3月12日
- 読了日 : 2017年3月12日
- 本棚登録日 : 2017年3月5日
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