ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る

  • バジリコ (2005年6月13日発売)
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感想 : 57
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少女が飛び込んだ“自由”な世界である西での生活。
そこでは異邦人での暮らしが待っていた。

軽い例えになってしまうかもしれないが、西原理恵子の「上京ものがたり」のようだった。十代の多感で生意気な少女の自分探しは、西では終わらず敗北感いっぱいで故国に舞い戻る。
そこで迎えた家族はあくまで優しくそして厳しい。失いかけたアイデンティティは、政治や宗教などの特別な背景があるにしろ、若い時代に誰もが経験する青春鬱。世界共通の病気だ。

ニュースや、男性が伝える(女性が彼の地からレポートすること自体が難しいだろうから)情報から少しも読みとれない女性たちの瑞々しい言動。ヴェールの中で彼らは心をときめかせ、悩み、笑う。そして普通に喫煙も飲酒もし、芸術を愛するのだ。

そして二度目の出発、彼女は今度こそ自分の意思で旅立つ。自由の代償をはっきりと認識しながら。
これは人生の旅物語。そしてその後の、今の彼女の旅が知りたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: イラン
感想投稿日 : 2010年7月30日
読了日 : 2010年7月30日
本棚登録日 : 2010年7月23日

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