少女が飛び込んだ“自由”な世界である西での生活。
そこでは異邦人での暮らしが待っていた。
軽い例えになってしまうかもしれないが、西原理恵子の「上京ものがたり」のようだった。十代の多感で生意気な少女の自分探しは、西では終わらず敗北感いっぱいで故国に舞い戻る。
そこで迎えた家族はあくまで優しくそして厳しい。失いかけたアイデンティティは、政治や宗教などの特別な背景があるにしろ、若い時代に誰もが経験する青春鬱。世界共通の病気だ。
ニュースや、男性が伝える(女性が彼の地からレポートすること自体が難しいだろうから)情報から少しも読みとれない女性たちの瑞々しい言動。ヴェールの中で彼らは心をときめかせ、悩み、笑う。そして普通に喫煙も飲酒もし、芸術を愛するのだ。
そして二度目の出発、彼女は今度こそ自分の意思で旅立つ。自由の代償をはっきりと認識しながら。
これは人生の旅物語。そしてその後の、今の彼女の旅が知りたい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
イラン
- 感想投稿日 : 2010年7月30日
- 読了日 : 2010年7月30日
- 本棚登録日 : 2010年7月23日
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