伝来から始まり禁教に終わる日本の「キリシタンの時代」をめぐるノンフィクション。
さまざまな文献をよく調べて書いてはいるし、行動力もすごいとは思うもののものの、学術的・歴史的な手続はすっ飛ばして、著者の個人的な関心によって全てが動く。恣意的な文献引用、適当な印象論、勝手な思い込み、都合のいい解釈、薄っすい考察。いくら「私的」とは言ってもほどがあるだろ、というレベルでかなりイライラする。
しかし、この本がキリシタンをダシにした「自分語り」だということに気づくとすっと腹に落ちる。どんな事象も自分の側に引き付け、自分の都合で解釈する。自分の抱いた印象は拡大的に一般化する。キリシタンは語るべき対象ではなく、自分を語るために消費される手段でしかない。そのようにして読むと、本書の面白さが見えてくる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年8月16日
- 読了日 : 2016年8月16日
- 本棚登録日 : 2017年8月16日
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