日本列島改造――1970年代 (ひとびとの精神史 第6巻)

制作 : 杉田敦  栗原彬  テッサ・モーリス‐スズキ  苅谷剛彦  吉見俊哉 
  • 岩波書店 (2016年1月28日発売)
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高度成長時代を象徴する田中角栄、戦後直ぐの総選挙で落選したときのほら演説が面白い。「三国峠を切り崩せば、季節風が太平洋側に抜けて、越後に雪は降らない。切り崩した土は日本海に持っていく。佐渡を陸続きにする。」しかし、これが現実に行われたのがこの時代。時代の歪みで苦しんだ人たち・三里塚の小泉よね、アイヌ被差別の宇梶静江、横浜での国鉄貨物新線抵抗運動を行った宮崎省吾。飛鳥田革新市政の限界が住民にとって「よりマシ」と考える対策を間に立つことで実現しようとする啓蒙的姿勢にあったことを初めて知った。一方、この鉄道はほとんど使われず、騒音公害は生まれなかったが、逆に言うと全く無駄な工事だった!とは皮肉。
宇梶さんの3.11を受けた詩が心にしみる。正にこの時代からの課題を深く指摘する。
「大地よ/重かったか/いたかったか/あなたについてもっと深く気づいてうやまって/その重さやいたさを知るべきであった/私達 多くの民があなたの重さやいたみとともに波に消え/そして大地にかえって行った/そのいたみに 今 私達 多くの残された民が/しっかりと気づき 畏敬の念を持って/手をあわす」横井庄一と小野田寛郎。小野田の「天皇は自ら責任を取るべきだった。今の無責任時代の源流になった。」との言葉は彼の無念の思いで響く。このほか、吉本隆明、金芝河。65年当時に韓国語を学べた大学は大阪外大と天理大だけだったとは今では考えられない話である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 現代史
感想投稿日 : 2016年4月27日
読了日 : 2016年4月27日
本棚登録日 : 2016年4月23日

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