教養主義の没落: 変わりゆくエリート学生文化 (中公新書 1704)

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  • 中央公論新社 (2003年7月1日発売)
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戦前は古本屋店主・岩波巌男が夏目漱石の心を出版したことから、教養主義の代表としての岩波文化が登場。講談社とのその後の歴史を分けた経緯。「小川三四郎」の1906年頃の学生文化。そして戦前の教養マルクス主義の全盛。戦後には左翼文化人として世論をリードした丸山眞男たち。石原慎太郎、大江健三郎、そして高橋和巳の僅かの生まれた時期の差が、旧制高校文化の有無への影響。そして60年安保頃の関西大学生の読書・雑誌のレベルの高さ。それが、今では東大・京大生も漫画本に変わっていった歴史の変化。80年代の京大・経済がパラ経(パラダイス経済学部)と言われたことに見られるような学部別の父親の職業・社会階層の関連性分析。教養主義が衰退し、現在の大衆主義に以降していくその歴史の分析が非常に鋭く、ちょうど狭間の世代であった自分自身の過去とも結びつけながら楽しく読みました。全共闘学生がなぜ丸山眞男を攻撃し、吉本隆明を崇拝したのか、かれらの出自の分析から、その屈折した心情を抉り、確かに「サラリーマンとして平凡な人生を歩む予感からくる恨み」のようなものが、デモに参加する学生たちの心にあったことは事実だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育問題
感想投稿日 : 2013年8月24日
読了日 : 2004年1月27日
本棚登録日 : 2013年8月24日

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