せきれい荘のタマル

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  • 小学館 (2011年1月18日発売)
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冒頭───

「おはよう! 元気?」
笑顔の中に大きな犬歯を光らせてタマルが片手を挙げた。
石黒寿史はあくびを噛み殺し、今にも閉じそうな目で相手の格好を眺めた。高校の体育の授業で着るような、水色のジャージの上下を身に着けている。実際、母校のものなのかもしれない。
こうして玄関の上がり框に立って大学の上級生と向かい合っているのが現実なのか、それとも夢の続きなのか、いまひとつはっきりとしない。しつこいノックに苛まれて布団から這い出した覚えがあるにはあるので、たぶん現実なのだろう。
「どうも、おはようございます」
寝起きのかすれ声で挨拶する。下げた頭の芯が揺れるような感じがするのは、ゆうべ隣室で飲まされた日本酒のせいだろう。

越谷オサム三作目(読むのが)。2011年1月初版。
静岡から東京の大学に進学してきた石黒寿史は映画研究部に入部し、部の先輩である新潟出身の田丸大介と同じ『せきれい荘』に住むことになった。
同郷で同じ部に所属する法村珠美に秘かな恋心を持つ寿史だが、なかなか事はうまくはこばない。
常にマイペースのタマルに振り回される寿史の毎日。
そのうえ、部室から8ミリカメラが紛失したり、怪しいサークルに勧誘されそうになったりとアクシデントが寿史に降りかかる。

『階段途中のビッグ・ノイズ』がすごく良かったので、この青春物も読んでみたのだが、これは今一つだったかな。
どたばたの面白青春物とでもいうべきか、テレビドラマかマンガのような作品だった。
ちょっと底が浅すぎる。
越谷オサムは、私にとって当たり外れがありそうだな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 越谷オサム
感想投稿日 : 2014年8月29日
読了日 : 2014年8月27日
本棚登録日 : 2014年8月27日

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