GOTH: リストカット事件

著者 :
  • KADOKAWA (2002年7月1日発売)
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感想 : 888
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他人を寄せつかない美少女『森野』と彼女が唯一話をするクラスメートの『僕』は他人には言えない趣味を持っている。異常な事件やそれを実行した者に対して、暗い魅力を感じるのだ。
そんな二人の周りで起きる猟奇的な殺人事件。


猟奇的な事件に興味を持つのはどんな理由からだろうか。興味本位や犯人の動機が知りたいと言うのが一般的だろうか。中には疑似体験として自身の欲求を満たす者もいるだろうし、高じて犯人を崇拝したりする人までいるだろう。
この主人公はもっと異質だ。淡々と観察するだけなのだ。傍から見れば自分の世界のみで生きているような『森野』の方が異質に感じられるだろうが、彼女は感情が出しづらいだけで何も感じていないわけではない。しかも子どものころの体験も、人格形成に大きな影響を及ぼしている。それに対し、ごく普通の家庭に育ち、何処にでもいるような少年の方が恐ろしい。友達や家族と会話をしていてながらも、何の感情も抱いていない。猟奇的な現場を見ていても高揚すらせず、まさに観察しているだけなのだから。犯人の方が罪悪感やら喜びやら何かしらの感情を持っているのに比べても、そら恐ろしく感じられる。
だが、話が進むにつれ、彼が単なる観察者から自らかかわっていく変化は、内面の変化が見えてこなかっただけに、なんとなく違和感を感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2015
感想投稿日 : 2015年1月24日
読了日 : 2015年1月24日
本棚登録日 : 2015年1月24日

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