特攻へのレクイエム

著者 :
  • 中央公論新社 (2001年7月1日発売)
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感想 : 4
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自分も「日教組のイデオロギーを受けた学校教育」の影響で、「特攻隊」という響きには、当時の大日本帝国の洗脳力や、向こう見ずで殺気に満ちた恐ろしい考え方、あるいは理解できない行為といったものを潜在的に感じていたのかもしれません。命を簡単に捨てる事のできる人間などいない事はわかっていながらも、敵艦を沈めるために堂々と突入した。と教えられたまま理解していました。この本を読むとそれらの疑問が全て解決します。“堂々と突入した”ことは事実でも、堂々と突入できる人間になるまでの経緯、すなわち「何で自分は生きているのだろう」から始まり、「ずっとみんなと生きていたいが命を捨てなければ大切な人たちを守れない」というジレンマ、また「死ぬとはどういう事なのか」といった死生観など、行ったり来たりの心中の戦いが学校教育では抜けているのだと思います。心の整理が完了していたからこそ彼らは堂々と突入できたのです。我々が教育されなかった大事な事は、特攻隊ほど家族や友人をそしてこの国を愛おしく想っていた人はいないという事でした。また特攻隊の人たちほど心の優しい人たちはいないでしょう。これほど辛い想いをしながら読んだ本はありません。そして、これほど癒された本もありませんでした。もう7~8回は読み返しましたが、一度読んでしまったものは元には戻りません。いくら感動的な部分を追いかけても最初の感動にありつきません。できる事なら記憶を抹消して最初からもう一度読みたいくらいです。しっかりと「まえがき」から読む事をお勧めします。特攻隊の方々の崇高な精神も去ることながら、著者の的確でパワフルな表現力に圧倒され、とにかく泣けます。泣いた後には心が満たされ、「日本人」である事の誇りがわき上がって来ます。また先祖に対する考え方が変わることでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 特攻隊
感想投稿日 : 2012年9月10日
読了日 : 2012年9月10日
本棚登録日 : 2012年9月10日

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