レインツリーの国

著者 :
  • 新潮社 (2006年9月28日発売)
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本を読むことが好きで、
このようにレビューを書くことを趣味としている私は
『フェアリーゲーム』という一冊の本の感想が
伸とひとみを引き合わせたという、この物語の始まりに
一瞬で心を引き付けられました。
 
メールのやり取りで、どんどん惹かれあっていく二人の気持ちが
手に取るようにわかって、まるで自分のことのようにニヤニヤ…
 
初めて二人が会った日。
私も伸と同じように、ひとみの言動に対し「???」ばかりでしたが
聴覚障害があると分かった時は本当にびっくりし
伸の自分の失態への後悔が、痛いぐらいに伝わってきました。
 
ひとみの「気を使ってほしいくせに同情されたくない」という気持ち。
意地っ張りで、それでいて色んなことを諦めていて・・・
切ないぐらい気持ちが分かります。
 
『痛みにも悩みにも貴賤はない。
周りにどれだけ陳腐に見えようと、それに苦しむ本人には
それが世界で一番重大な悩みだ。
救急車で病院に担ぎ込まれるような病人が近くにいても
自分が指を切ったことが一番痛くてつらい。
それが人間だ』(ひとみ)
 
相手の悲しみを理解しようとしても
絶対に100%わかることなんてできない。
その人にしか、その人の痛みや悲しみは理解できない。
 
けれど、だから「理解できないから仕方がない」と
自ら壁を閉ざしたり、諦めるのではなく
わからないかもしれないけれど
少しでも理解しようと、相手の心に寄り添うことが
大切なのだと思います。

色んなことを諦めていたひとみだったけれど
そんな自分を変えたいと、補聴器を隠さず、髪を切り、洋服を買い
少しずつでも、行動に移したひとみの姿は
最高に素敵な女性でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 有川浩
感想投稿日 : 2013年11月9日
読了日 : 2013年10月1日
本棚登録日 : 2013年11月9日

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