戦後十年の時代背景の下、薔薇・不動等の暗号で奇妙に繋がる事件、個性的な探偵役達により次々と展開される推理戦、作中で現在進行形で小説が書かれて居るかの様な不思議な感覚。終わってみれば確かに「虚無」への「供物」。 所謂「アンチミステリ」。『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』と共に三大、或いは『匣の中の失楽』を加えて四大ミステリに数えられる一冊。黒死館は未読なので存じないが、他の二冊に比べると読み易さの点では断然上。解説に「純文学」の言葉が用いられる様に、物語性が強い。…その所為かぶっちゃけ動機が理解できたかと訊かれると肯きかねる(笑)。 余談になるが後書と年譜に見られる作者の幼年〜少年時代のエピソード、7歳で江戸川乱歩を、13歳で小栗虫太郎・夢野久作を愛読し、7歳で「水少年」「足の裏を舐める男」と題した小説を書いたと云う話は面白い。「当時わたしは、足の裏というものを、人間の部品のなかでいちばん大事なところだと思い、そこに接吻する以外、人間を愛する行為なんてありえないと信じていた」
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カテゴリ:
ミステリ
- 感想投稿日 : 2005年10月31日
- 本棚登録日 : 2005年10月31日
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