「文章の掴み、に関する本です。タイトルとか書き出しとか、キャッチコピーとか。どうすればその先を読ませることができるか、みたいな」
そう言って、葉月は読み終えたばかりの本を、蛹に差し出した。
「目新しいものは無いように思うけれど」
蛹は仕事柄、文章を書く機会は多いのだろう。それゆえに、似たような本をどこかで読んだということらしい。
葉月は頷く。
「確かに、どっかで聞いたような話ばかりではありますね。でも、そういう、あちこちで見聞きしたような話でも、箇条書きで簡潔にまとまっていると使いやすいですし、具体例が豊富なのも便利かと」
「確かにそうかも」
蛹はそう言うと、最後まで軽く目を通し、それから、改めて最初から読み始めた。
「でも思うんだけどさ、結局のところ、他人が書いた文章なんて、誰だって読みたくないんだよね」
「だからこういう本が必要とされるんでしょうね。ぱっと見て、思わず読みたくなる文章、みたいな。中身よりもインパクトっていうか」
蛹は僅かに笑い、そして、言う。
「これはこれでいいんだけどさ、もうちょっとこう、読み手を啓蒙する系の本があってもいい気もするんだ。書き手にばかり寄ってないで」
「100倍感動できる読書法、とか、大事なことを見落とさない読書法、とか?」
「……言われてみれば、なんていうか、滑稽だね」
それはそれとして暫く借りるよ、と。
そう言って、蛹は栞を挟み、本を閉じた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
人文科学
- 感想投稿日 : 2014年8月15日
- 読了日 : 2014年8月13日
- 本棚登録日 : 2014年8月13日
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