サフラン・キッチン (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社 (2006年8月30日発売)
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本棚登録 : 118
感想 : 18
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きな臭いニュースでたまに名前を聞くだけの国、イラン。ムスリムの人たちに対しても、何となくネガティブなイメージがあるだけで、日常生活など想像もできない。そんな馴染みのない国や人たちの物語。
イランから逃れるようにイギリスに来たマリアムは、イギリス人男性と結婚し、娘をもうけた。イギリスで生まれ育った娘サラも結婚し、子供を持とうとしている。そんな中、イランから親を亡くした甥がマリアムの家にやってくる…
長い時を経て、過去と向き合う母。隠されてきた母の過去を知り、戸惑いながら理解し、受け止めようとする娘。
静かな感動に浸れる、家族の再生の物語だと感じた。
故国や家族という自分のルーツから離れて暮らすことで彼らが感じる空虚さや孤独だったり、「自由に生きる」ことが許されない場所があるという事実だったり、イランの生活が意外な程"普通"ー何となく戦前の日本と似てる感じなのかなと思ったーだったり、緑の多い寒いイギリスと乾いて暑いイランとのコントラストの美しさだったり。色々なことを感じられる一作だった。とても、良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国文学
感想投稿日 : 2013年8月31日
読了日 : 2013年8月31日
本棚登録日 : 2013年8月20日

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