ああワタシ、小川洋子さん作品の読者として初心者だなぁ。
と、あらためて思ってしまった。
お年始参りに親戚の家へ電車で往復約3時間。
その時にお供として持って出たのがこの本。
薄いし短編集だし、読むのが遅くてもほぼ読みきれるだろうと。
とんでもない。初心者ならではの誤算。
もう、一篇目の表題作『海』から、流れる時間がとてもゆっくりになった。
ゆっくりゆっくり、文字を追い、光景を思い浮かべ、気付けばその世界の住人になっている。
小さな弟の奏でる架空の楽器「鳴鱗琴」・皺くちゃの50シリング札・蝶のように活字を探す手の動き・きらきら光を反射するかぎ針・カタカタと鳴るドロップ缶・様々な抜け殻とふわふわひよこ・不完全なシャツ屋に、記憶の題名屋。
見た事のあるものも、見た事のないものも、すべてそこにある。
小川さんの書く世界は不思議だ。
「温かいのか冷たいのか、よく分かりません。心地よく温かいからか、あるいは逆にあまりにも冷たいからか、いずれにしても感覚が痺れてしまっているようなのです。」(80ページ)
以前から小川作品に感じていた温度はまさにこれ。
温かいような、ひんやりとしているような、でも振れ具合はどちらも激しくはなく、まるで人肌のよう。
時折、無性に、この体温のような世界に浸りたくなるのです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小川洋子
- 感想投稿日 : 2014年2月4日
- 読了日 : 2014年2月1日
- 本棚登録日 : 2014年2月4日
みんなの感想をみる
コメント 6件
vilureefさんのコメント
2014/02/04
nejidonさんのコメント
2014/02/04
九月猫さんのコメント
2014/02/05
九月猫さんのコメント
2014/02/05
cecilさんのコメント
2014/02/11
九月猫さんのコメント
2014/02/13