表紙絵の、鈴の上にちょこんと座った着物姿のちっこい男の子とウサギがかわいくて、手に取りじっと見ると抱え込んでいるのはポテチの袋。
いやーん、かわいいーーっ♪
しかも帯には「四国ののどかな田園を舞台に」とある。
四国大好き♪特に香川と高知はそれぞれ必ず年に数度行く。
これは読まなきゃー!とページを開く前からウキウキ。
ピアノの国際コンクール初出場を目前にケガをした冬弥(とうや)。
ケガ自体は軽いものだったが、ステージママ的な母親と諍いになり、最近クラシックに「懐疑的」な気持ちを抱いていた冬弥は思わずピアノをやめる!と言ってしまう。
父親(フィドラー)の提案で、しばらくピアノから離れて高野町にいる祖父(クラリネッティスト)のもとで春休みを過ごすことに。
そこで出会ったかわいい神さま。名前は安那(やすな)さま。
この安那さま、神さまだけれど特別な力はなく、鈴を守るというのがお役目。
大の甘いもの好きで、御付の楓殿に「ご飯が食べられなくなる」と怒られ、取り上げられてもこっそりお饅頭に手を伸ばそうとする――有り体に言うと、食い意地の張った神さま。
でもそれが、もう愛らしくて愛らしくて。
アイスクリームを「あと一匙、食べさせてたも……」と目をうるうるさせて見上げられたりしたら、楓殿に叱られてもまるっとひとつ食べさせてあげたくなる。
(おなか壊すのでダメです!)
安那さまと一緒に雛屋(ひよこや)の和菓子を食べたいなぁ。
連作短編集になっていて、5つのお話が収録。
「鈴の神さま」(1996年春)
「引き出しのビー玉」(1945年夏)
「ジッポと煙管」(1988年冬)
「秋桜」(2005年秋)
「十四年目の夏休み」(2010年夏)
時系列はばらばらだけれど、その時々の「見える」人と安那さまの交流が描かれる。
安那さまの無垢さ・愛らしさに、迷いや不安を抱えていた人は一歩を踏み出す元気をもらったり、幼い頃のやさしいふんわりとした思い出になったり。読んでいるこちらも心が温かくなる。
だけれど、どう見ても5歳くらいの安那さまの年齢が1000を軽く越えていることを思うと、出会った人たちとは違う時間の流れの中で暮らす安那さまが少しせつなくも感じる。
そして。
読み終わった後、あらためて表紙を眺め・・・
だめーっ!ポテチだめーーっ!!と叫んでしまったのでした(笑)
- 感想投稿日 : 2013年6月2日
- 読了日 : 2013年6月1日
- 本棚登録日 : 2013年6月2日
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