もの至極スケールのでかいヒューマンドラマ。
広大な大地、鮮やかな淡紅色の桜の束が
ありありと目前に広がっているかのような美しい描写。
それでいて闇の世界の冷酷と愛惜がシビアに、
また生々しく描かれている。
身の毛のよだつスリル。顔を背けずにはいられない残虐。
体の内の内の内側のやわらかな部分が焼け焦げるような情愛。
読みすすめる間、終始五感がざわついていた。
何が生か何が死か、何が惡か何が善か。
それを決めるのは社会でも国家でもない。
死をも畏れぬ激しい個の情念だ。
国家のしがらみを越え、数々の人間の思惑を越え、
時を越え、性別を越え…二人の男が
肉体と肉体、魂と魂を強烈に響き合わせる
モザイクなしのリアルに、強く胸を打たれた。
地球上にたった一人でいい。己の全霊を捧げたい。
魂ごと重なって、混ざり合いたい。
己がその渦に溶けてなくなってしまってもいい。
ひとつになりたい。
心の底からそんな風に思えるパートナーに出合うということ。
これほどまでに生きるしあわせがあるだろうか。
魂が欲するところのものに忠実に、純粋に、
身命を賭して生きること。
それはおそろしいほどに美しい人間のエゴではないかと
拙者は思う。
とにかく読み応えのある一冊でし。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2010年11月21日
- 読了日 : 2010年10月16日
- 本棚登録日 : 2010年10月16日
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