日本的想像力の未来 クール・ジャパノロジーの可能性 (NHKブックス)

制作 : 東 浩紀 
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911631

作品紹介・あらすじ

マンガ・アニメ・ゲーム・映画・アート…今や日本のポップカルチャーは世界中に浸透している。この「クール・ジャパン」現象が映し出すものは何か。日本を代表する論客、世界的に注目を集めるクリエーター、第一線で活躍する海外の日本学者をむかえて、戦後から今日に至る日本文化への眼差しを多角的に検討し、ときに「未成熟」とされる日本的想像力の核心へと迫る。「日本文化」のイメージを刷新する、新たな日本学のはじまりがここに。

感想・レビュー・書評

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  • 村上隆の話が大変刺激的だった。萌え美少女好きの無名アーティストを、いかに海外アート市場で価値ある存在としてプロモーションしていくか、数年がかりの戦略が語られている。現代アートは資本主義の世界に属するビジネスであり、マーケティングが必要。この村上隆の意見だけ聞くと、抵抗感を示す人も多いだろうけれど、実際どれほどトライ・アンド・エラーを繰り返して、アートビジネスで価値ある存在だと認めさせているのか、プロセスの苦労がわかるとびっくりする。

    東浩紀の携わった本は、やっぱり面白い。批評の言葉を社会につなげること。人文系知識人の間でのみ通用する内輪向けの言葉から、批評を解放すること。今社会で広く影響力を持っている表現、欲望を批評すること。

    東はオタク文化が好きだから、オタク文化を批評する。現代日本でゲーム、アニメ、マンガなどのオタク文化の他に、もう一つあまり批評の対象にならず、一般に広く人気を誇っているジャンルがある。お笑いだ。お笑いについて、東浩紀ばりの切り口で語る批評が現れることを期待したい。

  • 【日本的未成熟の系譜】(キース・ヴィンセント)
    日本を愛す海外の人=オタク的
    another countryでなくpromise land
    近代化→女性性、母性社会
    原爆と米軍占領による去勢
    村上隆は確信犯的にそれを逆手にとり、倒錯・変態する風刺として描く

    【アート界におけるクール・ジャパンの戦略的プロデュース法】村上隆
    Mr.

    【日本映画と未成熟】黒沢清
    オフビート感覚

    【かわいいの本質】宮台真司
    1963
    『少女クラブ』→『少女フレンド』講談社
    『少女ブック』→『週刊マーガレット』集英社

    コクーニング 記号化
    オヤジに対する「変の無害化」→援交ブーム
    ガングロ=性的視線の遮断

    【日本的未成熟をめぐって】
    貧しい芸術アルテ・ポーヴェラ

    【クール・ジャパノロジーの不可能性と可能性】ジョナサン・エイブル
    未知、理解不可能
    九鬼 いきの媚態
    対象として矮小化されている

    【プロレタリア文学のクールさの可能性】ヘザー・ボーウェン=ストライク
    found

    【ヨーロッパにおけるクール・ジャパノロジーの兆し】シュテフィ・リヒター

    【1992以降の日本のサブカル史における意味論の変遷】宮台真司

    【トランスナショナルな理論の構築に向けて】毛利嘉孝

    【もう一つの日本学】

    【ポップカルチャー言説の視差から考える】

  • 3回読んでもわかんないとこが結構あったけど視座をくれる。面白い。

  • 2010年におこなわれたシンポジウムの記録で、本書の編者である東浩紀のほか、社会学者の宮台真司、芸術家の村上隆、映画監督の黒沢清などが参加しています。また、東や斎藤環の著作の英語訳にたずさわったジョナサン・エイブルなど、外国人の参加者もくわわって、「クール・ジャパン」にまつわる諸問題が論じられています。

    『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)などの東のオタク論でセクシュアリティの問題が回避されていることを、斎藤環や小谷真理らが批判していましたが、それと並んで東にはサブカルチャーにおけるナショナリズムおよびオリエンタリズムの問題にも関心が希薄であるように感じられます。本書でもそうした東のスタンスは保持されており、おそらくシンポジウムに参加しながら書籍版への参加を強く拒んだ大塚英志がその点についての厳しい批判をおこなっていたのではないかと推測するのですが、毛利嘉孝によってこの点についての問題提起がなされています。

    「クール・ジャパン」を問題視する大塚らの立場と、そこに本質的な問題はないとする東との対立軸が明瞭になっていればもう少し見通しのきく議論になっていたのではないかと思うのですが、けっきょくなぜ「クール・ジャパン」について議論しているのかよくわからないような話になっており、少し拍子抜けでした。

    もっとも、当時においてはいまだ「クール・ジャパン」の内包する具体的な問題が表面化していなかったことも、議論が深まらない原因だったのではないでしょうか。現在では、たとえば本書刊行とほぼ同時期に起こったムーヴメントとしてのK-POP現象などを通して、東アジアにおけるポップ・カルチャーが孕むナショナリズムの軋轢について具体的な議論がなされる条件が生まれているのではないかという気もします。

  • 日本のポップカルチャーを雑駁にくくった「クール・ジャパン」という言説を巡り、宮代・東両氏の分析を軸に欧米の日本学・日本研究者や世界で活躍する日本の映画監督・アーティストを交えてその視座の現状を炙り出す。議論は時に擦れ違いぶつかり合うが、結論で河野至恩氏も強調しているように、その錯綜する視座の炙り出しこそが本書やその元となるシンポジウムの真骨頂だと肯定的に受け止められる。(刊行から7年が経過しているが引き続き)今後の論の推移を見守りたい。

  • 多くの人が耳にしたことがあると思いますが、クールジャパンとは主にマンガやアニメをはじめとする日本の文化産業の総称です。本書では、そんなクールジャパンについて、美術作家、映画監督、社会学者etc…たちによって様々な方面からの議論が展開されています。かなり真面目な内容ですので、興味のある方は読んでみて下さい。
    (電気電子工学科 B3)

  • クール・ジャパンという言葉について考えさせられた

  • 東浩紀ファンなので読んでみることにした2年前のシンポジウムのまとめ本。
    自分自身はオタクというほどオタクでもないが、メジャーどころのアニメや漫画は読んではいる。
    オタクを学問として見るといろいろと小難しいことを言えるのだろうが、当のオタクの人々は何も考えていないのだろう。特に外国の人に日本のサブカルチャー回りを分析されるとなんだかむず痒い気持ちになる。

    宮台真司の「かわいい」論の講演は面白かった。2000年くらいから回りでも「かわいい」を使う人が増えてきたのがずっと不思議だったので、ある意味で納得できた。
    村上隆の講演もまた面白い。Mrという人のプロデュースの報告という体で、戦略的に自分を売り込むことの大切さを説いている。
    まずは、世界(世間)と自分の両方を分からなくてはならないが、難しい。

  • シンポジウム。

  • クールジャパノロジーについてのシンポジウムを書籍化した本。微妙にかみ合ってたり、かみ合ってなかったり。最後の対談での東と毛利の対決が面白かった。完全にかみ合ってないし。毛利がどうとかではなくて、毛利的な分析ももっと見たい。

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