福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

  • ディスカヴァー・トゥエンティワン (2012年3月12日発売)
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先日、国会の事故調査委員会が出した原発事故の調査報告書が出た。そこにはこの事故をしっかりと『人災である』と規定しているという。国会内の調査委員会なので、実はそこまでは期待していなかった。これから概略だけでも目を通すべきだと思っている。

その前の、五月実は民間が出した事故調査報告書を読んだ。

この中のものを読んだだけでも、あの原発事故が非常に構造的なものから起こったもので、それは大飯原発が稼動しようが野田がなんと言おうが全然改善されていないということが明らかである。

私は全国民がさわりだけでも読むべきだと思った。というような感想を読んだ直後に以下に書いた。

「福島原発事故独立検証委員会調査検証報告書」
ざーと読んだ。疲れたが、いつかやらねばなぬ事だと思ったので、兎も角、細かい所は飛ばしながら読んだ。急いでいる人は、冒頭の北澤宏一委員長のメッセージだけでもいい。結論の多くはそこに書かれている。あと少し余裕がある人は、最終章「福島第一原発事故の教訓」がいい。此処に所謂全体の結論が書かれている。この報告書全体を通じて、課題、調査内容、結論という風に分けて書いているので、所々むつかしい文章はあるが、総じてわかり易い報告書だったと言っていいだろう。Webで読む事ができるので、多くの人はそこだけ読んだ方がいいかもしれない。検証内容を私は検証しているわけではないし、米国評価には不満がある。しかし、エリートパニック、絶対安全神話、SPEEDI、最悪のシナリオ、原子力ムラ等々の問題にキチンと切り込んでいるのは、評価出来る。

この大部の報告書をWebで読むのは、限界があるので、私は少し高いが一家に一冊持っていても良いと思う(せめて、1000円以下にはするべきだ)。これから新たな知見が加わった時、それが全体の中でどういう意味を持つのか考え易いからである(例えば東電幹部の証言は拒否されてこの中には入っていない)。

疲れた。例えば、この様な記述があり、私は暗澹とする。

福島第一原発は、レベル7の大災害であったにもかかわらず、そして約11万人の人々が今も避難生活を余儀なくされている悲劇であるにもかかわらず、急性被曝による犠牲者はこれ迄存在していない。官邸中枢スタッフは我々のインタビューの中で「この国にはやっぱり神様がついていると心から思った」と思わず漏らしたものである。
事故から時間が経つにつれて、事故のシミュレーション解析が進み、高温で溶解した核燃料の大半は、原子炉圧力容器を突き破って、格納容器のコンクリート床にまで沈みこんでいることが推定されている。「最悪のシナリオ」にきわどいところまで向かっていた可能性は十分にあった。(396p)

そのときには、3000万人の首都圏の住民の避難が始まる。その時日本がどうなるのか、想像が出来ない。岡山にいる私も、おそらく今の生活はなかった。一年経って、日本が何も変わっていないのに、暗澹とするのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: は行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2012年7月8日
読了日 : 2012年7月8日
本棚登録日 : 2012年7月8日

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